人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

2014-10-01から1ヶ月間の記事一覧

ボブ・ディラン/考察・追憶のハイウェイ61Revisited(前)

一定の訳語が定着できない英単語にRevisitedというやっかいなニュアンスを持った言葉がある、というのが前回の題目でしたが、その時いくつか現代文学の古典を例に上げながら、これにも触れるとしたら一回分を割かなければならないぞ、とあえて上げなかったの…

Revisited、あるいは永劫回帰

Revisitedという、意味は簡単だが訳語にしづらい単語があります。文字通りVisitにReがついているだけですから再訪(再訪問)でいいのですが、実際にはReがつくだけで回数だけでなく質的にもVisitの意味が変化してしまうため、一定の訳語に定着できない厄介な自…

鬱より躁が危険

より正確に言えば、躁鬱混合状態というのがある。気分は鬱なのに躁的な活力には溢れているから、やけくそで狂言自殺を図ったりするのはこういう時に起こる。 躁自体が、何もできなくなるが常識的判断や理性は保たれている鬱とは大きく違って、コントロールを…

まだ鬱が

まだかなり嫌な鬱気分が晴れない。夜は寝ても熟睡できないし、昼間は気力がまったく起きない。生活リズムも整わず、今朝は月曜朝毎週の受診を寝過ごしてしまった。起きている時間が調整できないのだ。いつも眠いし、かといって十分な眠気は足りないような感…

ピーナッツ畑でつかまえて(13)

スヌーピーの主張する通り、たとえルーシーがパインクレスト小学校の秩序を滅茶苦茶にしてきたからと言って、それがすなわちスヌーピーの危機にもつながるとは飛躍した見解でもありました。確かに彼はチャーリーの犬(端的に言えば)であり、ライナスの友人で…

天才アール・アンダーザの芸術

ジャズがお好きな方でも60年代西海岸のアルト奏者、アール・アンダーザは偶然の機会がないとまず見逃してしまうだろう。ジャズでは珍しいことだが、この人は自己名義のデビュー作一枚きりのアルバム・リリースしかない。普通ジャズマンは先輩格のプレイヤー…

『機動戦士ガンダム』を初めて観た男・その2

一週間以来鬱で、今日は何も書く気が起きない。仕方ないので下書き段階で放置していた作文を掲載することにしました。正確には、これは本題に入るまでで終わっていて、具体的に内容に踏み込むのは次回で、という書き方になっています。それなら次回はいつ書…

残念な傘の話

先日ようやくムーミン谷の話を終えた。あれはいくらなんでも夢オチという残念な終わり方をしたが、結末から逆算して書いていたら逆に結末の方を変えていたと思う。引き合いに出すのもおこがましいが『ドン・キホーテ』も『ガリヴァー旅行記』も、むろん『不…

ピーナッツ畑でつかまえて(12)

そうした風変わりな趣味で他人を驚かせていたのも、すでに消え去った昔の夢でした。今のスヌーピーにとっては、過去の自分の行状さえも軽蔑の的であり、それはライラに手離されて再び子犬園に運命を託されていた数日間の深い絶望をくぐってきたからかもしれ…

ピーナッツ畑でつかまえて(11)

第二章。 スヌーピーが引き取られてからブラウン理髪店の庭の居心地の良い小屋に落ち着くまでには、二か月以上の内装工事がかかりました。その間チャーリーはどれだけパインクレストじゅうを買い物してまわらなくてはならなかったでしょう。スヌーピーもまた…

ピーナッツ畑でつかまえて(10)

スヌーピーはやれやれ、話にならんわといった仕草をすると、この際きみの言う通りだとしよう、だが今回のルーシーのターゲットはいずれも人間どうしのことだよ。それがどうして私にまで類がおよぶんだね? チャーリーが答える前にスヌーピーは先回りしました…

ピーナッツ畑でつかまえて(9)

チャーリー・ブラウンの報告によると、ルーシーはライナスの毛布を引きちぎったかと思うとピッグペンから埃をはたき落とし、フランクリンに人種差別的な暴言を吐きながらペパーミント・パティとマーシーのおしゃべりに割って入って眼鏡を奪うと踏み割り、シ…

ピーナッツ畑でつかまえて(8)

チャーリー・ブラウンの妹サリーを候補から外すなら、ルーシーことルシール・ヴァン・ペルトはパインクレスト小学校の女帝、ダーク・ヒロインというべき存在でした。いや、サリーなどはルーシーの弟ライナスに熱を上げ「私のすてきなバブーちゃん」と迫って…

ピーナッツ畑でつかまえて(7)

彼の好きな食べ物はドッグフードはもちろん、チョコチップクッキーやピザ、アイスクリーム、ルートビールなどでした。ただし好みは気紛れで、大好物のはずのチョコチップクッキーやアーモンドクッキーのような「食べ物が中に入った食べ物」は嫌いと言うこと…

ピーナッツ畑でつかまえて(6)

スヌーピーは知性を獲得するに従って、多くの仮装をするようになっていました。いわゆるコスプレであり、そのレパートリーは140を超えるとさえ言われています。ですが変装の多くが「世界的に有名な…」(The world famous...)という肩書きで始まるものが多い…

ピーナッツ畑でつかまえて(5)

スヌーピーはさまざまな色の皿を持っていますが、普段は赤い皿をごはん皿、黄色い皿を水皿として使用しています。かつてはスヌーピーには皿の種類を区別できていないと思われていたこともありましたが、これは犬が色盲と思われていたことが原因で、色覚的に…

ピーナッツ畑でつかまえて(4)

スヌーピーの住む犬小屋は、外見では想像できないほどの伝説的な広大さを誇っていました。伝説的というのは、実際に小屋の内情を知るのはスヌーピー本人と唯一小屋への出入りを許された親友にして秘書のウッドストックだけであり、小屋を建てたチャーリーは…

ピーナッツ畑でつかまえて(3)

チャーリーよりも早くルーシーの姿に気づいたとはいえ、スヌーピーは視力が弱く普段はコンタクトレンズを着けてました。今はたまたまレンズを着用し、またチャーリーの話から事態は予測できましたが、もしコンタクト着用でなかったら彼はルーシー以外の人影…

ピーナッツ畑でつかまえて(2)

スヌーピー、やっぱりここにいたね、とチャーリー・ブラウンは犬小屋まで走ってくると、スヌーピーからすれば間の抜けたあいさつとしか受け取りようのない第一声を上げました。スヌーピーはタイプライターを芝生に出して、ウッドストックに口述筆記させてい…

ピーナッツ畑でつかまえて(1)

第一章。 ある暗い嵐の夜でした。 水皿の水にぼくのかおがうつっている。ぼくはのどが渇いているけど、この水をのみほせばぼくのかおは見られなくなる。ならぼくを見ているほうがいいや。そうナルシシストの小型ビーグル犬は考えると、そろそろおやすみの時…

偽ムーミン谷のレストラン(80)完

最終回。 どうやらあなたがいちばん真実に近づいたようね、とミムラ夫人はフローレンに微笑みかけました。それも私は知っていたし、こうしてあなたとお会いするのも厳密には今が初めてではなく、もうずっと前からこの時は始まっていたし、私にとってはすべて…

偽ムーミン谷のレストラン(79)

フローレンはとっさの流れで蘇生させてしまったそれの上体を片腕抱きしながら、自分が今確かめたばかりのことがどういう意味を持つか、それに対してどのように対処すべきかまたは関わるべきではないかを考えましたが、そもそもフローレンには対処のしようも…

偽ムーミン谷のレストラン(78)

フローレンは素早くうつぶせに倒れた偽ムーミンの死体にかがみこむと、頭をつかんで頸椎をごきり、と捻りました。フローレンの眼はムーミンの神経系に再びニューロン伝達が復帰するのを目視することができましたから、どうやら目的は達せられたようでした。 …

『機動戦士ガンダム』を初めて観た男

まず感じたのは歴史的作品としての技術的ハンディキャップで、35年も前のテレビ・シリーズなのだから仕方がないとも言えるが、制作年代では『ガンダム』に先立つテレビ・アニメの傑作はいくつもある。筆者の好みで熱中した作品を上げれば『妖怪人間ベム』『…

手すりの上の猫

住んでいるアパートの外廊下に、一階に集合ポストから郵便物を取るため出てみると、中庭を挟んではす向かいのメゾネットの二階窓のヴェランダの手すりに、ぽっちゃり太った猫がのんびりと座っているのが見えた。向こうもこちらに気づいた様子はあり、猫は警…

偽ムーミン谷のレストラン[集成版(58)-(77)]

(58) ええと続きだったな、どこまで話は進んだっけ? ヘムル署長たちがテーブルを直したところだよ、と偽ムーミン。ほほう、とたちまちムーミンパパは皮肉を浴びせかけました。よそのテーブルのことの方が家族の会話より気にかかるのかね?実は私もさっきか…

偽ムーミン谷のレストラン[集成版(41)-(57)]

(41a) 第五章。 追加登場人物・三人の魔女トロール&子だくさんの母トロール(ミムラ夫人)。 ミムラ夫人、ミムラやミイの母親。35人の子を持つムーミン谷一多産な夫人。本人同士も知らないスナフキンの実の母親。 三人の魔女トロール。 その一、トゥーティッ…

『ムーミン谷(集成版)に関するお詫び

このブログの運営者はパソコンを所持していませんので、先月九月上旬に機種変更するまではフィーチャーフォン(ガラケー)用のモバイル・サイトでブログを作成していました。従来型携帯電話、いわゆるガラケーでは使用できる機能は非常に限られており、たとえ…

偽ムーミン谷のレストラン[集成版(21)-(40)]

(21) 第三章。登場人物・承前。ムーミン。ムーミンパパ。ムーミンママ。…以上核家族。スノーク。フローレン。…以上兄妹。ヘムレンさん・ジャコウネズミ博士。…以上学者仲間。トフスランとビフスラン夫婦。…以上双生児夫婦。ヘムル署長。スティンキー。…以上…

偽ムーミン谷のレストラン[集成版(1)-(20)]

(1) ムーミン谷にレストランができたそうだよ、とムーミンパパが新聞から顔を上げると、言いました。今朝のムーミン家の居間には、 ・今ここにいる人 ・ここにいない人 のどちらも集まっています。それほど広くもない居間に全員が収まるのは、ムーミン谷の住…