今回と次回の6枚はジョニー・グリフィン生涯の名作と言えるアルバムが並ぶ。ブルー・ノート・レーベル出身でリヴァーサイド・レーベル移籍が吉と出た例はグリフィン以外は思い当らず、強いて言えばセロニアス・モンクだが、モンクの場合はブルー・ノートの売り出しが失敗し、プレスティッジで冷飯を喰わされ、リヴァーサイドの尽力で移籍が成立したのだった。
リヴァーサイドの嗜好にはあまり洗練されていないジャズというか、プレスティッジほど野放しではなく、ブルー・ノートほど作り込まない志向性が契約ミュージシャンにも制作サイドにもあった。ヴァーヴのような大手レーベルなら「ワルツ・フォー・デビー」は疑似ライヴにしただろう。
ブルー・ノートはレギュラー・バンドの再編成を迫るほど強引なこともあった。一方リヴァーサイドはモンクにウィルバー・ウェアとの契約更新はしないようアドヴァイスしつつ、レーベルとウェアとの契約は継続してグリフィンのサイドマンに起用し続ける。義理人情ならブルー・ノートにもあるがエリート主義の臭いがするのに対し、リヴァーサイドの方は困った時にはお互いさま精神を感じる。
まず「ウェイ・アウト」(画像1)と「ジョニー・グリフィン・セクステット」(画像2)が58年2月26日に一気に録音される(前作はブルー・ノートへの「ザ・コングリゲーション」57.10)。リズム・セクションはリヴァーサイドのハウス・バンドとも言えるケニー・ドリュー(ピアノ)、ウィルバー・ウェア(ベース)、フィリー・ジョー・ジョーンズ(ドラムス)で、グリフィンのアルバムで聴くと歴代のマイルスのリズム・セクション~レッド・ガーランド・トリオやウィントン・ケリー・トリオより上なんじゃないかと思える。ドリューは晩年日本制作のスタンダード集を多作して株を下げたが、ここでは変態ベースと爆発ドラムスをうまくまとめあげる絶妙なプレイを聴かせる。ワン・ホーンの「ウェイ・アウト」もいいが、ドナルド・バード(トランペット)とペッパー・アダムズ(バリトン・サックス)が出すぎることなく華を添える「セクステット」ではグリフィンはさらに奔放になっている。
そしてメンバーを一新したセクステット作品「ザ・リトル・ジャイアント」59(画像3)をグリフィンの最高傑作にあげる人は多い。だがこの三枚、いずれも甲乙つけ難い。