アメリカの権威あるジャズ雑誌「ダウン・ビート」は64年度の「最も注目される才能」賞にアーヴィンを選んだ。当然それは四部作の発表によるものだ。
第一弾「ザ・フリーダム・ブック」63.12(画像1)はまだ過激化する前のフリー・ジャズへの回答というべき作品で、1曲カヴァー4曲オリジナルのうち冒頭の'A Lunar Tune'がいい。四部作は全作リチャード・デイヴィス(ベース)、アラン・ドウソン(ドラムス)で、このアルバムは変態ピアニスト、ジャッキー・バイヤードが見事にはまった。
第二弾「ザ・ソング・ブック」64.2(画像2)はピアノが端整なトミー・フラナガン、かつ全6曲スタンダードと聴きやすいので、アーヴィン入門編かつ代表作とされることが多いが、実は例外的アルバムだろう。基本がブルースの人だからか、'Just Friends'などの長調曲は妙に軽く、'Yesterdays'など短調曲では退廃的なほど暗い。この黒い退廃感は一般的なスタンダード集にはない。
第三弾「ザ・ブルース・ブック」64.6(画像3)はトランペットにカーメル・ジョーンズ、ピアノにギルド・マホネスを迎え、スピーディ、ロウ・ダウン、モーダル、マイナーの4曲のオリジナル・ブルースが聴ける。モーダルな'True Blue'が光る。