人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

(37e)ブッカー・アーヴィン(ts)

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「5ミンガス」63.9を最後にミンガス門下から独立したブッカー・アーヴィン(Booker Ervin)は老舗プレスティッジ・レーベルと契約、まだ退団前の録音「バッド・ニュース・ブルース」63.4はエディ'ロックジョウ'・デイヴィスとのテナー・バトル、「エクサルテーション」63.6はパーランとの共演という旧来路線だったが、ミンガス・バンド退団後からプレスティッジお得意の量産企画、三部作~五部作ものがアーヴィンにあてがわれた。「ブック」四部作+拾遺集がそれ。63年12月~64年10月までに5枚分、おまけにその間ポニー・ポインデクスター(各種サックス)のラテン・ジャズ快作「ガンボ!」、ドン・パターソン(オルガン)のソウル・ジャズ快作「ヒップ・ケイク・ウォーク」にも参加している。もっとも50年代のプレスティッジならば年間10枚が当然で、それに較べると制作ペースが遅い分丁寧とは言える(ジャズ景気の衰退、社長・プロデューサー交替もある)。

アメリカの権威あるジャズ雑誌「ダウン・ビート」は64年度の「最も注目される才能」賞にアーヴィンを選んだ。当然それは四部作の発表によるものだ。
第一弾「ザ・フリーダム・ブック」63.12(画像1)はまだ過激化する前のフリー・ジャズへの回答というべき作品で、1曲カヴァー4曲オリジナルのうち冒頭の'A Lunar Tune'がいい。四部作は全作リチャード・デイヴィス(ベース)、アラン・ドウソン(ドラムス)で、このアルバムは変態ピアニスト、ジャッキー・バイヤードが見事にはまった。

第二弾「ザ・ソング・ブック」64.2(画像2)はピアノが端整なトミー・フラナガン、かつ全6曲スタンダードと聴きやすいので、アーヴィン入門編かつ代表作とされることが多いが、実は例外的アルバムだろう。基本がブルースの人だからか、'Just Friends'などの長調曲は妙に軽く、'Yesterdays'など短調曲では退廃的なほど暗い。この黒い退廃感は一般的なスタンダード集にはない。

第三弾「ザ・ブルース・ブック」64.6(画像3)はトランペットにカーメル・ジョーンズ、ピアノにギルド・マホネスを迎え、スピーディ、ロウ・ダウン、モーダル、マイナーの4曲のオリジナル・ブルースが聴ける。モーダルな'True Blue'が光る。