人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

(37h)ブッカー・アーヴィン(ts)

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ブッカー・アーヴィン(Booker Ervin)も今回で最終回。なんと全8回の特別待遇。ほとんど全アルバム紹介。あまりに寡作で不遇だからだ。ならばむしろエリック・ドルフィーアルバート・アイラーこそ相応しかった。革新性やスケールではアーヴィンは彼らに及ばない。アーヴィンの独自性は伝統的なスタイルの拡張にあった。
アイラーの伝記に引用されたアーヴィンのアイラー評がある。ジャズ雑誌の、いわゆる「ブラインド・フォールド(覆面試聴)・テスト」で、アーヴィンは「アイラーだね」と当ててみせ、「'Spirits'(64)は好きだったけどこれ('Holy Ghost',65)はいけない。コルトレーンと演ってるファラオ・サンダースはいいが、弟のトランペットと演ってるこのアイラーにはまったく形式が欠けている」、さらに「人間としては好きだ。気持いい男だよ。だがそれを別にすれば、この音楽はぼくには無価値だ。星1つだね」と酷評している。

プレスティッジ以降、アーヴィンはパシフィック・ジャズに2枚、ブルー・ノートに2枚(うち1枚死後発表+サイドマン参加1枚)しか残していない。
パシフィックは「ストラクチュアリー・サウンド」66.11(画像1)と「ブッカー・ン・ブラス」67.10で、レーベルの性格からも時代からもコンパクトなカヴァー曲が並ぶ。仕事としては悪くない。
BNではさすが硬派で「ジ・イン・ビトウィーン」68.1(画像2)、「バック・フロム・ザ・ギグ」68.6(死後発表)共に全曲オリジナルで、当時のジャッキー・マクリーンと近い、プレスティッジ時代の好調を思わせる好盤になった。アンドリュー・ヒルの「グラス・ルーツ」68.8がアーヴィン最後のスタジオ録音となる。ブッカー・アーヴィン、70年8月31日、N.Y.で急逝(腎臓病)・39歳。

ボツ作品「バック・フロム~」の発表は76年だったが、同年話題になったのは65年10月29日、ベルリン・ジャズ祭の発掘ライヴ「ラメント・フォー・ブッカー」(画像3)の方だった。収録曲はケニー・ドリュー・トリオをバックにアーヴィンが延々ソロを聴かせる'Blues For You'27分半!とホレス・パーランの追悼ソロ・ピアノ(75年録音)'Lament For Booker'8分半、だけ。怪作「トランス」録音の2日後だから思いっきり怪しい。