人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

(39d)キャノンボール・アダレイ

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Julian Cannonball Adderley(1928-1975,alto sax)。前々回の「マイルストーンズ」タイトル曲だが、テーマ合奏の後ファースト・ソロはキャノンボールから始まる。これが僅かなミス(モードとしては)はあるが作曲してあったかのように歌心に溢れたソロで、現行盤CDに追加された別テイクを聴くとまるで違うので驚いてしまう。
この「歌心」がジャズの場合は厄介でコルトレーンのような怪物ジャズマンでもバラード、ミドル・テンポ、高速チューンを一貫した情感でまとめあげるのには苦労したのがありありとうかがわれる。才能、意欲、探求心に溢れすぎていた、ともいえるだろう。
キャノンボールコルトレーンと較べて、早いうちから自分の個性を身につけていたジャズマンだった、ということもできる。マイルスのバンドに在籍し、きびしい研鑽を受けはしたが、影響はされなかった。これは歴代マイルスのメンバーでも珍しい。

59年のキャノンボールは1月にケニー・ドーハム「ブルー・スプリング」に参加し、2月はマイルス・セクステット(ピアノはウィントン・ケリーに交代。ビル・エヴァンスは素行不良で半年でクビになった)のツアーでシカゴを訪れ、2日・3日にポール・チェンバースの「ゴー」(トランペットはフレディ・ハバード)、「キャノンボール・アダレイクインテット・イン・シカゴ」(画像1)を録音する。マイルス抜きのメンバーでのびのびとした演奏が聴け、名盤と名高い後者ではコルトレーンが'You're The Weaver Of Dreams'、キャノンボールが'Stars Fell on Alabama'でワン・ホーンのバラード対決をする。だが個人よりもバンド全体の一体感が素晴らしく、アルトとテナーが触発しあって名盤になった幸福な一枚だろう。

次のマイルス・デイヴィス「カインド・オブ・ブルー」Kind of Blue,59.3,4(画像2)は冷徹至上な孤高の名作。全曲必聴だが特に'So What','All Blues','Blue In Green'の3曲だろう。
ところが次作「キャノンボール・テイクス・ア・チャージ」59.4では何事もなかったように明るくスウィングしているキャノンボールなのだった。そしてマイルス・セクステットから独立する。