人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

(46j)グラント・グリーン(el-g)

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Grant Green(1935-1979,electric guitar)。
前回までグラント・グリーンの全リーダー作、主要サイドマン参加作を追ってきたが「キャリン・オン」69.10で4年半ぶりの復帰以降、グリーンはルーツであるR&Bに戻ってソウル・ジャズ=ロックに徹することになる。時代の要求と本人の資質が折りあったのだがそれも70~72年までで、さらに洗練されたフュージョンが求められるとグリーンの仕事はなかった。70~72年にブルーノートに6枚のリーダー作、他のレーベルに2枚のサイドマン参加作を残して、以降76年と78年にマイナー・レーベルに1枚ずつ録音があるだけでグリーンは79年に逝去した。盟友ラリー・ヤングは前年に逝去している。最盛期は20代の数年間と、まるでスポーツ選手のようだった。

70~72年のリーダー作ではライヴ盤2作'Alive!'70.8(画像2),'Live At Lighthouse'72.4(画像3)がノリノリの傑作で、10年前は渋いジャズ・ギターだった人がこれかと思うと感慨深いが、「アライヴ!」の'Sookie Sookie'(ドン・コヴェイのアホ曲)やブルーノート最終作で2枚組の最強盤「ライトハウス」の'A Walk In The Night'(ジョニー・ブリストル曲)のハードボイルドなかっこよさにはしびれる。

ただしこの2作のライヴ盤に挟まれた'Visions'71.5,'Shades Of Green'71.11,'The Final Comedown'71.12はやる気がない。後になるほどよくない。たるんだジャズ・ロックの見本になってしまった。これらは売れ線を狙いすぎてしくじった失敗作といえる。

結局スタジオ盤では「キャリン・オン」と「アライヴ!」の間に制作された'Green Is Beautiful'70.1(画像1)が最後の佳作だろう。ベスト・トラックは'Windjammer'で、後に「ライトハウス」でさらに熱いライヴが聴けるが、同じ作者(オルガン奏者ニール・クリーク)の'Dracula'以外は誰でも知ってるジェームズ・ブラウンビートルズバカラックで固めて見事な成功作になった。この好調がライヴ盤でしか再現できずに終ったのも時代とジャズマンの関係を考えさせる。