Thelonious Monk(1917-1982,piano)。
モダン・ジャズでは珍しくモンクのソロ・ピアノは特別な人気があり、サイドマンとの不調和を気にせずモンクの持ち味を堪能できるものと珍重されている。確かにソロ演奏は優れたピアニストならではの特権で、他の楽器ではそうはいかない。しかしジャズを含めたポピュラー音楽もクラシックや民族音楽でさえも、ベースとドラムスまたはそれらに代わる楽器編成は通常不可欠なので、音楽の推進力や空間性にベースとドラムスが果している役割の大きさがわかる。
Thelonious Himself(画像1)57.4.5&16
-はモンクのソロ・ピアノ作品でも際立って緊張感の高い一作で、サックスとベースの加わった'Monk's Mood'が聴こえてくるとホッとする。曲数は8曲と「ソロ・オン・ヴォーグ」と大差ないが前回は10インチLPで30分、今回は12インチLPで一曲一曲が長い。オリジナルとスタンダード半々だがベースとドラムスが聴こえてくるような軽快な前作に較べて今回はどっしりと重い。時間が止まったり伸縮するような感覚がある。どんどん加速していくバド・パウエルとも、厳密なテンポで途切れないフレーズを繰り出すトリスターノとも違う。傑作だがリラックスできない。サックスとベースを1曲だけ入れたくらいだから、モンク本人もわかっていたのだ。
リヴァーサイド専属ながらアート・ブレイキーの強い要望で実現したのが、
Art Blakey's Jazz Messengers With Thelonious Monk(画像2)57.5.14-15
-で、全6曲中5曲がモンクのオリジナル。モンクとブレイキーのどちらの所属先でもないアトランティックから発売された。ブルーノート~プレスティッジ時代からブレイキーはモンクのドラマーを勤めてきた。モンクの音楽をもっとも理解したドラマーだった。だがここでは遠慮会釈なくメッセンジャーズの音楽をやっている。ピアノとドラムスが同じでもリーダーが違うとこうも違う好見本になっていて楽しめる。
次のアルバム、
Monk's Music(画像3)57.6.26
-は「ブリリアント・コーナーズ」の成功を再び狙って大混乱に陥った作品。解説は次回に譲る。