人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

吹替え短縮版映画について

ドキドキ!プリキュア」を見ていたらこんな場面があった。今回の敵は人間の邪心を物に憑依させて怪物化させるのだが、まず携帯CDプレイヤーが襲ってくる(電池切れで自滅)。次の現場に直行すると、
キュアダイヤモンド「今度はラジカセか」
キュアハート「何それ?」

思わず苦笑したが、中学二年の新学期から始まるのがプリキュアの共通設定なので、つまり1999~2000年生まれなのだ。ラジカセどころかビデオデッキすら知らなくてもおかしくない。固定電話や公衆電話すらわからないかもしれない。想定対象の視聴者は3歳~8歳の女児とその兄弟・両親なのだ。シリーズが始まった頃には就学前だった少女たちが、今ではプリキュアの年齢になっている。

見たいDVDもあるのだが、DVDの視聴は疲れるのでテレビ放映の吹替え映画の方がいい。もっとも、水野晴郎淀川長治逝去後の「金曜ロードショー」や「日曜洋画劇場」はひどくなった。金曜はまだしも日曜はサービスのつもりか滅茶苦茶な編集で、シリーズものなどは前作のダイジェストと続編のダイジェストを本編と平然と繋いだりして、映画の始まりと終りがわからなくなるような惨状のあまり興をそがれることおびただしい。

昔は一時間半枠で実質75分の地方局・深夜枠用吹替え短縮版がいっぱいあった。うまく枝葉をシークエンス単位でカットしてエッセンスを凝縮してあったり、権利関係から日本未公開・ビデオ化や再公開不可能な作品も多く重宝したものだ。ゴダール「メイド・イン・U.S.A.」もベルイマン「狼の時間」「情熱の島」も、フェリーニの「サチュリコン」もトリュフォー「野生の少年」も、アントニオーニの「さすらい」「情事」「砂丘」も最初はそれで見た。あの「イージー・ライダー」など山田康雄山谷初男(!)吹替えの短縮版はオリジナルを越えているのではないか。

昔のアメリカ喜劇だと「マルクスの二挺拳銃」はうまくいったが、「ニノチカ」は名場面が三か所ある。三つともカットされていたのには唖然とした。
165分の「情事」が75分!というのはアントニオーニ映画ならではだが、二時間半あるジョセフ・ロージーの「秘密の儀式」をまずテレビで見て、後でアテネ・フランセで完全版を見て愕然とした。短縮版は後半まるまるカットしていたのだ。これがあるから昔の映画は面白かった、というと強引か。