人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

(補3h)セロニアス・モンク(p)

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Thelonious Monk(1917-1982,piano)。
カーネギー・ホール」のライヴは黒人団体主催の音楽祭への出演だったが、ついにモンクもジャズ・クラブだけではなく、コンサート・ホール規模の集客が可能なアーティストになる。ホール・オーヴァートンが編曲した10人編成によるビッグ・バンド作品、
The Thelonious Monk Orchestra At Town Hall(画像1)59.2.28
-は発表当時絶賛を博したほどには今では聴かれていないが、モンク初の単独リサイタルという話題性を割り引いてももっと聴かれていいアルバムだと20年聴いてきてやっとわかった。この連載記事のためにモンクを年代順に聴いてきて、このアルバムを聴くとハッとする。選曲はもちろんモンクのオリジナルばかりで新曲はないが、ホーン・セクションもモンクのソロも爆発している。10分前後の長い演奏ばかりだが展開の読めない構成で、編曲の巧みさに感心する。初めて聴く人には向かないかもしれないが、代表作を数枚聴いていれば面白さがわかる。

次のスタジオ録音、
5 By Monk By 5(画像2)59.6.1-2,4
-も見すごされがちな傑作のひとつ。タイトルは「5曲のモンク曲をやる5人」という意味で、フロントは名手サド・ジョーンズ(コルネット)と、この後モンク・カルテットのレギュラーになるテナーサックスのチャーリー・ラウズ。再演4曲に新曲は1曲だけだが、サドの名演で再演曲も新鮮に聴ける。しかも新曲'Played It Twice'がモンク曲でも屈指の怪作。あまり怖くないお化けが行進しているような曲で、CDには別テイク2曲の合計3テイクまとめて聴ける。モンク究極の1曲だろう。

Alone In San Francisco(画像3)59.10.21-22
-は新曲2曲を含む全9曲のソロ・ピアノ作品。初の西海岸ツアーの時病で倒れた夫人をロサンゼルスに残しサンフランシスコで録音されたものだが、この時初めてモンクに精神疾患の発症があったと没後に明らかになった(モンクの父、娘も発症している)。モンクは数日間行方不明になり、錯乱状態で発見された。この軽やかで明るいアルバムにはそんな背景があったと知ると、「アローン」というタイトルが不吉に響く。