人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

#16.承前『ウェル・ユー・ニードント』

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うちのバンドで取り上げるレパートリーはマイルス、ロリンズ、コルトレーンが多く、なぜかアート・ペッパーだけは白人ジャズマンでもジャッキー・マクリーンと同格に好まれた。ぼくの演奏スタイルは破れかぶれだったからビ・バップからはみ出ていて、パンキッシュなロック・ギター出身だからアルトサックスでも爆発的な演奏になりがちでギター的な奏法-スクィーズ(チョーキング)やトリルを頻用したが、ぼくはコルトレーンのライヴ映像を観て、替え指やサイドキーを使ったトリッキーな奏法を学んだのだ。
定説とまではいわないが、コルトレーン・カルテットが源流になって、ハード・ロックが編み出されたと論じる評者もいる。守屋くんが加わった時点でバンドの方向性はすぐにコルトレーン・カルテットだ、と決った。エルヴィンをこなせるドラマーなど、そうはいない。

守屋くんの選曲は「おいおい、おれたち素人だぜ」と普通は演るバンドがないようなもので、『ティンティン・ディオ』『チューン・アップ』『蓮の花』『アフロ・ブルー』『マトリックス』『パッションダンス』など、採譜とテーマ吹奏・進行指示を担当するぼくは大変だった。面白いのはスタンダードの「恋とは何でしょう」「ラヴ・フォー・セール」の二曲で、演奏するたびに我武者羅で支離滅裂になっちゃったなあ、と気落ちするのだが、守屋くん始め花ちゃんもKも「佐伯さんに向いてる曲だね。すごくいいよ」と、ぼく自身の手応えとは正反対に好評だったことだ。自分ではいい演奏だとはまるで思えないのだが。

うちのバンドが取り上げたモンクの曲は『エピストロフィー』『ウェル・ユー・ニードント』『ブルー・モンク』『ミステリオーソ』『ストレート・ノー・チェイサー』『イン・ウォークト・バド』『ベムシャ・スウィング』といったところで、後は難しくてものにならなかったのが数曲ある。新宿ピットインでのジャムセッションではモンクの曲を演ると(選曲権はホーン奏者にあるのだ)非常に受けが良かった。共演者も喜んでくれた。

ところが高田馬場イントロのジャムセッションでは露骨な敵意に囲まれた。なぜかみんな中央アート出版の「スタンダード・ジャズ・ガイドブック」(画像)を持参している。会話の様子からこれが「ジャズ研」の連中か、とわかった。早稲田大学ジャズ研究会。こいつらがまた、嫌なやつらだった。