人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

#35.承前『イエスタデイズ』

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前回触れたチャージ・バック制をとっているライヴハウスやジャズクラブはだいたい小規模で、テーブルやカウンター席で30人未満、パイプ椅子や立ち見にして40人~50人、という程度の店が多い。ロック系のバンドは二組~四組くらい組んで知りあいを呼ぶからお客は入るが、チャージ・バックの総額を出演バンドと人数分で分配すると千円にも満たなかったりする。結局チャージ・バックといってもお店の側が得をするシステムでしかない。

うちのバンドが単独出演でも盛況だったのはKとぼくが出版業界で顔が広かったからで、バンドとしての実力ではなかった。それでも満席になるのはちがいないのでクラブからは定期出演を歓迎された。
西島さんのピアノ・トリオや山本さんのバンドはかなり苦戦していた。西島さんは神戸でプロ活動していたとはいえ東京ではまだ日が浅かったし、山本さんは、ジャズ業界では知られた人とはいえ、そうなると知りあいはわざわざ観に来てくれない。お客さんが10人未満だとバンド側がチャージを負担しなければならなくなる、というシステムだから(お店に有利なゆえんだ)ぼくは西島さんや山本さんのクラブ出演には仕事先で晩に予定のない事務職系の女性を誘って(ぼくのライヴを観に来てくれた人たちだからたいがいの娘は二つ返事だった)お客さんになりに行った。ぼくと連れの女性なしでは10人を割りそうなことが多かった。山本さんや西島さんのようなプロでも、ジャズはお客さんを呼ぶのが難しいのだ。

西島さんも山本さんも、CD(画像)よりもライヴの方が良く、それも自分のバンドよりジャムセッションの方がさらに良く、もっと言えばうちのバンドと共演してくれている時の方が一段と良かった。うちのバンドなんか素人の集団にすぎないが、聴いてくれる人を楽しませ、自分たちも楽しむ、という姿勢は真剣だった。山本さんや西島さんは自分自身のバンドではアーティスティックになってしまうのだ。うちのバンドなんか全員笑いながら(苦笑も笑いのうちだ)演奏していたが、それも真剣だからこそだった。西島さんも山本さんもユーモアのセンスのある人だったが、自分のバンドだと音楽性の高さを優先したような演奏になってしまう。失敗するかもしれないような演奏はしない。うちのバンドは素人だから失敗なんか覚悟でぶっ飛ばす演奏を平気でやり、なんとかやってのけていた。