人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

アル中病棟入院記106

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・3月30日(火)曇りのち晴れ
「朝食後、喫煙室は満員。食事の遅いどうし、Uzさんと空いてから一服しに入るとSkさんも二巡目か入ってきて、小声で♪~'The days of wine and roses...'と口づさんでいる(注)。女優はリー・レミックでしたね、夫は…。ジャック・レモン。そうそう、監督はビリー・ワイルダー、アル中になる夫婦の話でしたね。Kくんも入ってくるが彼は嫌いな相手とは話さないので無言で吹かしている。HAも入ってくる。彼女はSkさんから逃げていたのではなかったか?やあ、喫煙室ってなんでこんなに落ち着くんでしょうね。ホールではNGの話もできるからじゃないですか。そりゃそうだ、はははは」

「昼食前の空き時間、相談されていたAtさんの酒歴を手伝う。孫(空白)体力。お孫さんのためにも体力を取り戻したい、ですね、と確認するとAtさんは嬉しそうに、昔は柔道三段。それは素晴らしいですね。冒頭部分には、心の病(空白)酒・暴力・浪費(空白)性生活・盗み。これは本人の意図がわからないと文章に起せない。こうしたことがあったということではないですよね。ないです。そうした誘惑から遠ざかりたい、そうなる危険を避けたい?いずれもなかなか納得してもらえる文章にできず、やっと言い回しを逆転させればいいんだと気づき、飲酒から来る心の病のために~などを決して行わない、しっかりした人間性を取り戻したい。どうでしょうか?そうそう、プラス思考。はい、では続けて、これまでのようなマイナス思考ではなくこれからの人生はプラス思考で生きていきたい。これでいいでしょうか。はい。喜んでもらえる。だいぶまとまってきましたね。もうひとふんばりですね。だが核心となる中間部分が本人もいちばん他人に明かしたくないことなので、実際はまだまだ大変だ(注※)」

「午前中はFさんに頼まれてMtさんを外来ミーティングに同伴することになる。MtさんはAAや断酒会もミーティング未経験だからさ、頼むよ。それを言えば院外ミーティング未経験なのはこちらも同じだ。なんだか今回の入院は他人の世話ばかりさせられている」
(続く)

(注)『酒とバラの日々』通称『酒バラ』。ジャズを演奏する人なら演奏経験のないことはまずない映画主題歌由来のスタンダード曲。
(注※)Atさんはこの二年後に亡くなる。