「採血検査で朝6時半すぎに起こされる。第三病棟のナースステーションにしぶしぶ行く。Nk画伯が終えたところだった。じゃあ佐伯さん、と看護婦に呼ばれ、眠そうね。眠いです。遅くまでマンガなんか読んでるからよ、何回も刺し違えて目を醒ましてあげましょうか。それは勘弁です。じゃあ倍採りましょうか。その分戻るまで何日かかりますか。一回食事すれば大丈夫よ、貧血気味なの？やや貧血、でも入院して一か月になりますが、10日で1kgずつ体重が増えました。では腕を台に乗せて袖をまくってください、あら、一回で入っちゃったわ。しかも痛くもなんともないや。ジョークにはジョークで返すのね、と看護婦は笑い、はい力を緩めてください。検査結果が楽しみです。すぐ出るわよ、佐伯さんは受診日はいつ？毎週木曜日です。明日だとまだ間に合わないわね。なら来週の診察ですね。目は覚めたみたいね。男の中の男になった気分です」
「慌ただしい一日だった。朝食後、朝の会のあいだに書いたのが寝起きの採血漫才で、早朝に起こされやや躁気味で愛の献血してきたぞ、だから今朝の朝食は全員ヤクルトつきだ、と隣のやつみたいなことをSmくんに言ったりする。ところがホワイトボードの採血欄にYnさんとNk画伯の名前しかない。まちがってまた数日後に採血に呼ばれたりしては安眠妨害なので、取り違えがなかったかナースステーションに確認する。看護婦のAhさんがわざわざ記名したシールを貼った採血容器二本と伝票まで持ってきて、大丈夫間違いありません、と念押しされる」
「朝の会は報告事項と確認だけで終ったが、全体会ではいつもの婦長が公休のためNj看護婦が司会を代行する。朝の会でみなさん、今日の全体会では『入院のしおり』を持ってきてください、と申しわたされて、やはり問題人物の素行について病棟全体への規則確認というかたちで警告、またははっきりとした注意があるだろう、と始まる前から異様な緊張感があった」
「が、そいつKwはKdさんの隣の空席に勝手に座席票を貼り替え、そのテーブルのYzさん(この人はまともだと思っていたが…)と朝食前から大声で話をしていたが、朝の会では出席していたものの全体会の間に姿をくらましていた。自分に都合の悪い状況を察知して留守にし、規則の確認？聞いてませーん、という態度をとるつもりなのだ」(続く)
