人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

アル中病棟入院記145

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・4月3日(土)晴れ
(前回から続く)
「第一病棟に入院してる子に話しかけられてちょっと雑談したんですが、とSaさんのことは言わず話題にのせ、男性と女性で部屋の中の仕切りのカーテンが色違いだそうです。ここは女性の部屋のカーテンは何色ですか?白よ、無地の。ならここは男女同じだ、やっぱり。どうして?とUzさん。Kくんが、色分けしないと部屋を間違える患者が多いからですよ、と代りに説明してくれる。そんなに病気が重い人が多いんだ、とUzさんには相当意外だった様子。これで今日のSaさんの奇妙な言動を話したら、さぞかしKくんは動揺するに違いない」

「そうでなくても今日は彼にとっては落ち着かない日だったらしく、週末帰宅外泊で病棟に残った人が三分の一程度なのがかえって焦燥感をそそったらしい。落ち着いて日記を書きたいのにしきりに一服しないか、と誘ってくるので、断るほうが面倒だからそのたびにつきあうのだが、誘ってくる目的はというと陰口や病院への不満をこぼしたいのでうんざりしてくる。病院食のメニューは壁に掲示してあるが、明朝のメニューは食べられるおかずが一品もないという。そういう時には、というより大概彼はふりかけをかけて食べているのだが、ふりかけも切らしてしまったという」

「ふりかけならあるよ、とワゴンの引き出しを開いて見せ、いくらで買う?それがきみの論理か。きみこそ苦手で残したものをおれによこすが、今後おれは受け取らない。きみが残すのはきみの勝手だ。こんなふうに強く出たのは、昨晩Atさんに衣類をもらっていたのを揶揄されたからだった。佐伯さん佐伯さん、とAtさんは黒の長袖Tシャツ、黒のパンツ、紫の長袖Tシャツを差し出してきて、紫、しっと、好きじゃない。たまにはこういうのもいいですよ。だが酒歴作成の感謝の気持なんだろうな、と結局受け取った時にKくんが入ってきて、なんだそれ?Atさんにいただいたんだ。何でももらうんだな。それがわだかまっていたのだ」

「Kくんは躁が長期で鬱は短いのか、数週前の数日間のあの憐れっぽい彼とは別人のようにイライラ型の躁になっている。あれはかりそめの鬱だったのか。本人にもその時期の記憶がないようだ。診断名は躁鬱から適応障害に変ったらしい。それに躁症状が加わっただけなのか。ともあれ、土曜日はここまで、だ。この日記を書いているのは日曜の晩だ」