人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

営業している。

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 日中はこの店はただのプレファブ倉庫みたいな様子をしている。前身であるヤキトリ屋こーちゃんの時代はそうでもなかった。営業時間は午後4時~9時というやる気のない店だったが、黄色いのぼりと赤ちょうちんを雨の日だろうが出しっぱなしにしており、拾ってきたような板によれよれの筆文字で書いたメニュー表が出窓から見えるようになっていて、シャッターは閉め忘れか面倒くさいのかで閉めていないことが多かったのだ。

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 だが創作料理居酒屋に衣替えしてからは営業時間外はきちんと赤ちょうちんをしまい、店の入り口に場違いなほど立派な玄関マットを出していて、これもきちんと営業中にだけ敷く。ボロ板みたいなメニュー看板は出さず、以前より補強されてきれいに塗り替えられたシャッターも営業時間外はきちんと閉めている。これではまるで人格変異を起こしたようで、たしかに商売としてまともなのは現在の創作料理居酒屋なのかもしれない。しかしカウンター席5席、テーブル席2席しかない店を、まだ立ち飲みで客の回転が牛丼チェーンや駅のそば屋並みに速い営業ならともかく、こんな住宅地の外れにポツンとあるような店にとってまともな商売とはどんな基準になるものか。これが隣にパチンコ屋でもあればなるほど、交換所ねと納得もいくのだが、そういうものもない。

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 道の向かいには眼科医院があり、少し離れて斜め向かいに美容院と中華料理店がある。美容院はたぶん40年前からここの店、というような固定客で支えられているのだろう。眼科医院は最寄り駅から徒歩圏ではここしかなく、未だに電子カルテを使っていない老舗だが院長先生は物腰も柔らかく名医と評判が高い。となると怪しいのは中華料理店で、という話題は何度もしてきたが要約すると、中華料理店とヤキトリ屋こーちゃんはたがいを監視している諜報機関の仮の姿の派出所なのではなかろうか、と仮説を立てでもしないと商売など成り立っている様子はないのだ。だがヤキトリ屋こーちゃんに何かが起こった。創作料理居酒屋の看板に架け替えてからこのかたは、一見尋常な営業をいそしんでいるように見える。
 それも敵(!)の姿を欺く一種の作戦なのではないか、とも考えられる。だとすれば創作料理居酒屋、ひょっとしたら今も黒幕はこーちゃんのじいさんかもしれないが、じいさんの心中にはどのような策謀が秘められているのだろうか。わかるません。ひょっとしたらやっぱり、何も考えていないかもしれないのだ。