人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

ピーナッツ畑でつかまえて(25)

 それならウッドストックに訊いてみようじゃないか、とチャーリー・ブラウンは、こんな窮地までもあるじの忠実な下僕ならぬ秘書としてスヌーピーについてきた雑種の小鳥を指して提案しました。スヌーピーあるところ常にウッドストックあり、死路への逃避行とも言えるこの逃亡にもウッドストックは当然のように同行していましたが、寡黙なこの小鳥はパインクレストの平和な日々からまるで変わらない様子に見えました。もともと毛並みはみすぼらしい雑種ですし、小鳥相応に小食ですから、日毎にやつれていく様子がありありとわかるチャーリーたちに対してウッドストックは今やほとんど優雅にすら見えるほど以前と変わりのない風貌を保っていました。彼らの序列を知らない通りすがりの人が見れば、この小鳥こそがグループはのあるじであり、少年と子犬を従えているように思えたかもしれません。
 これはちょっと不自然じゃないですか、とスノークはヘムレンさんたちに向き直り、あの少年と犬は食うか食われるかという事態に直面したわけでしょう?だったらまず二人であいつをヤキトリにしてこの場をしのげばいいはずですよね。そうしないというのは、やはり何か理由があるのかな。食えない鳥でもあるまいし、裏づけなしには納得がいきませんよ。
 それはだね、とヘムレンさんは首を傾げると、われわれの場合なら主役をムーミンに置き換えて考えるといい。手錠でつながれたムーミンスナフキンがフローレンと三人で逃避行のすえに、ついに食糧も底を突く。ムーミンたちならどうするね?
 何の逡巡もなくフローレンを食べるでしょうね、とスノークムーミンスナフキンの友情は固いですから。
 私もそう思う。だが君まで同意するのはどんなものかな。仮にも君はフローレンの兄だろう?あまりに身も蓋もない発言ではないか?
 哲学者として私は、とスノーク、倫理よりも真実を貴びますからね。
 では彼ならどう答えるだろうね、とヘムレンさんはスノークに注意を促しました。しんちゃんはハイレグお姉さんに肩車され、左右の手をエレベーターガールとバスガイド嬢に取られながら丘を越えてくるところでした。道端では、花を摘みにきたフローレンが足をくじいてうずくまっていました。しんちゃんはハイレグお姉さんに下ろしてもらうと、さりげない足どりでフローレンに近づいていったのです。