人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

Cecil Taylor - The World Of Cecil Taylor (Candido, 1960)

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Cecil Taylor - The World Of Cecil Taylor (Candido, 1960) Full Album : https://youtu.be/WD7JTpXZ1To
Recorded at Nola's Penthouse Sound Studios, NYC, October 12 & 13, 1960
Released 1960, Candid ?8006, Supervised by Nat Hentoff
All compositions by Cecil Tayor except as indicated.
(Side A)
1. "Air" [Take 28] - 8:41(00:00)
2. "This Nearly Was Mine" [Take 1] (Oscar Hammerstein II, Richard Rodgers) - 10:51(08:45)
3. "Port of Call" [Take 2] Taylor 4:22(19:40)
(Side B)
1. "E.B." [Take 2] - 9:59(24:05)
2. "Lazy Afternoon" (John Latouche, Jerome Moross) - 14:52(34:04)
[Personnel]
Cecil Taylor - piano
Buell Neidlinger - bass
Denis Charles - drums
Archie Shepp - tenor saxophone (A1&B2 Only)

 評=ブライアン・オリューニック(allmusic.com)★★★★1/2
 アルバム冒頭の切り裂くようなデニス・チャールズのドラムスから、リスナーはスペシャルな体験に入り込んだのに気づく。それはこのセッションが1960年に録音された当時の、アヴァンギャルド・ジャズのファンの反応を想像させるに余りあるものだ。このアルバムはテイラーの初期のキャリアにおいて、当初のスタンダード曲のモダニズム解釈から数年後にテイラー自身の過激な実験が結実するまでの、過渡期の素晴らしいドキュメントになっている。
 ここではカルテットは若き日のアーチー・シェップ(『エアー』と『レイジー・アフターヌーン』のみ参加)とベーシストのビュエル・ネイドリンガーを含み、安定感の限界まで迫りながら性急にテーマを済ませるとインプロヴィゼーションに飛び込んで行く。スタンダード曲の『ジス・ニアリー・ワズ・マイン』はジョージア朝風に誇張されたテイラーの力強いロマンティシズムが発揮され、短いが喜びに満ちた締めくくりは、テイラーが10年後の70年代に取り組むソロ・ピアノ・コンサート演奏を暗示させるものといえる。
 トリオ演奏による『ポート・オブ・コール』と『E.B.』はともにテイラーがすでに前代未聞のピアノの巨匠に達したことを知らしめる完璧な傑作で、まるで運指から閃光のように音楽的アイディアがほとばしるようだ。とりわけ驚異的なのは、抽象性への到達より先に深くブルースに沈み込んだ情感と鼓動が音楽に溢れていることだろう。見識あるリスナーですら聴きとるのが難しいのだが、テイラーの音楽はブルースから離れないものなのだ。
 このセッションはさまざまな形で発売されてきたが、テイラーの音楽への最適な入門であり、ジャズの「伝統的」フォームを十分踏まえながら可能な限り飛躍してみせたものを示してくれる。古典的アルバムであり、誰もがコレクションに持つ価値がある。(全文・拙訳)