人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

新☆戦場のミッフィーちゃんと仲間たち(27)

 今年のパインクレスト小学校のサマーキャンプは、とペニマン先生は言いました、戦場です。クラスのみんなは爆笑しました。パインクレスト小学校の先生はヴィトキェヴィッチ先生、リーブマン先生、オッターバーグ先生、シュルツ先生と冗談のきついユダヤ系の先生が揃っていますし、ペニマン先生はアフロ系とユダヤ系のハーフでその上ゲイと教育委員会でも人種差別撤廃のテストケースとして適性を注目されているような人ですから、生徒たちからの人気も高い先生でした。学校がもっと面白くなるのに異論はないからでもあるし、ペニマン先生のジョークは実際面白かったのです。
 はいはい、皆さん静かに、とペニマン先生は言いました、ここは笑うところではありませんから。ところで中沢くん、とペニマン先生は手前の席のロイを指して(その席に座っていればペニマン先生には「中沢くん」なのです。ちなみにクラスは自由席でしたので、ルーシーが「中沢くん」と呼ばれたこともありました)、戦場とはどういうところですか?中沢くんことロイは、これは普通に答えた方がいいのかな、と、利害を争って軍隊と軍隊が戦うところです、と答えました。では具体的には?それは連合国軍とドイツ軍とか、北軍と南軍とか。
 そうですね、それからアメリカとヴェトナム軍というのもありました。これはどこに利害があったんでしょうね?それからドイツ軍でもそうですが、戦争においては利害がはっきりしないのに戦っていると負けます。これは負けた時のことを考えずに戦ってしまうと負けるということでもあります。南北戦争などは負けても勝っても北軍の勝ちでした。私たちが今でも南軍を英雄視するのは外国の表現では判官びいきと言います。負けるとわかっているのに戦うのはロマンをそそりますからね。
 まあ小学生には難しい話は置いておいて、と先生は、サマーキャンプが戦場というのは本当です。理屈を理解するのは難しくても、現場の空気に触れる体験は貴重なものです。もちろん戦闘に参加するにはみなさんはまだ歳が若すぎますから、ちょうどおあつらえ向きの休戦地がありました。斬ったはったの戦闘は見学できませんが、休戦中で待機している人殺しから体験談がうんざりするほど聞けるでしょう。兵士どうしでは飽きあきした話でも、みなさんが教えを乞えば生い立ちから自慢話までうんざりするほどお話ししてくれるはずです。任意参加ですが、ぜひ出るように。