人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

詩と童話・その他創作

創作童話『偽ムーミン谷のレストラン・修正版』より抜粋5話

(11) 第二章。 従者は伝令の役目を果たして引き上げて行きました。戸口まで見送ったのは好奇心旺盛なくせに気取り屋なので谷の陰口を一身に集めているスノークで、ぼんくら揃いでは例外ない谷の住人であるからにはスノークもまたぼんくらのひとりでしたが、…

創作童話『夜ノアンパンマン』より冒頭5話

(1) 第一章。 あんパンが初めて製菓店舗の店頭に並んだのは1874年とされており、翌1875年(明治8年)4月4日には花見のために向島の水戸藩下屋敷へ行幸した明治天皇に山岡鉄舟が献上し、お気に召された天皇によりあんパンは宮内省御用達となりました。以降、4月…

創作童話『NAGISAの国のアリス』より冒頭5話

(1) 第一章。 10歳のアリスはお姉さんのロリーナ(13歳)と妹のエディス(8歳)といっしょに川のほとりに座り、ドジソン先生のお話を聞くのが好きでした。ドジソン先生は当年とって30歳、男ざかりの数学の先生で、年ごろの男性にはよくあることですが同年輩の男…

創作童話『戦場のミッフィーちゃんと仲間たち』より抜粋5話

(4) キティ亭潜入という突拍子もないミッフィーの提案にアギーもバーバラもウインもメラニーも黙っていましたが、別に無視を決め込んでいたのではなく本来無口なのがうさぎの性質だったからでした。植物は話しかけるとよく育つ、と言われますが、うさぎほど…

創作童話『荒野のチャーリー・ブラウン』より抜粋5話

(14) スヌーピーはチャーリー・ブラウンの世話焼きを日ごろ干渉過剰に感じていました。飼い犬が手を噛むというのを実際にやってみたらどうなるんだろうな。酷たらしい殺人現場、むくろとなって横たわるチャーリー・ブラウン。その頃サングラスで顔を隠した一…

創作童話『偽ムーミン谷のレストラン』より抜粋3話

(29) スナフキンが着いたのは、夜も更けてからのことでした。谷は深い雪の中に横たわっていました。谷の両側にそびえるはずの山はまったく見えず、霧と夜の闇に包まれていました。街の中心地を示すかすかな灯りさえなく、スナフキンは長いあいだ国道から谷に…

このブログの(大雑把な)過去記事カタログ

このお方はアメリカのサイレント映画最大の俳優の一人、「千の顔を持つ男」ことロン・チェイニー(1883-1930)様です。オジー・オズボーン様ではありません。 さて、本ブログは2011年5月からブログサービス終了までの2019年9月まで毎日欠かさずヤフーブログに…

修正版『偽ムーミン谷のレストラン』補遺(未完)

♥ (May 1, 2019) ところで集団行動と言ってもやる気のない者とやる気のある者の見分けがつかないのに数だけは必要という場合がある、とムーミンパパは言いました。普通集団行動というのは目的が一致しなければ成立しないものだ。 ほほう、とスノークは先をう…

修正版『偽ムーミン谷のレストラン』第七章(未完)

(61) 第七章。 ところで、とスナフキンは唐突に尋ねられました。思い出したようにしかわれわれの話が続かないのはなぜかね? さあ、とスナフキンは返答に窮しました。そして一瞬考えて、努力が足りないんじゃないですかね、と答えました。口にした直後すぐに…

修正版『偽ムーミン谷のレストラン』第六章

(51) 第六章。あけましておめでとうございます。 ヘムル署長はぽかんと口を開けました。うわ驚いた。これはいったいどういうことかね?確か昨年の10月上旬に(50)第五章、おしまい。と話は終わっていたはずではないか。この2か月間の落とし前をどう着けるとい…

修正版『偽ムーミン谷のレストラン』第五章

(41) 予定変更。最終章・第五章。 レストランの床にステッキが倒れ、シルクハットがひらりと落ちると床の上を転がってどこかのテーブルの下に潜り込みました。レストランの中の全員が――つまりムーミン谷の住民全員のうち、 ・ここにいる人全員、と ・ここに…

修正版『偽ムーミン谷のレストラン』第四章

(31) 第四章。 前回は爬虫類や哺乳動物の陰茎や睾丸の話で始終してしまい非常に遺憾だ、とムーミンパパは壁に手をついてうつむきました。慙愧の至りだ。反省、いや猛省。どうせ駄弁るなら魚卵や卵巣の話の方が良かった。私は食べたことはないが、フグの卵巣…

修正版『偽ムーミン谷のレストラン』第三章

(21) 第三章。 最初、人びとはスナフキンの存在に気がつきませんでした。あるいは、気がつかないふりをしていました。気づくとはすなわちその存在を認めることであり、認めてしまえばそれは間違いだ、認識の違いだと言い張ってもあとの祭りです。 ですが認識…

修正版『偽ムーミン谷のレストラン』第二章

(11) 第二章。 従者は伝令の役目を果たして引き上げて行きました。戸口まで見送ったのは好奇心旺盛なくせに気取り屋なので谷の陰口を一身に集めているスノークで、ぼんくら揃いでは例外ない谷の住人であるからにはスノークもまたぼんくらのひとりでしたが、…

修正版『偽ムーミン谷のレストラン』第一章

(1) ムーミン谷にレストランができたそうだよ、とムーミンパパが新聞から顔を上げると、言いました。今朝のムーミン家の居間には、 ・今ここにいる人 ・ここにいない人 ……のどちらも集まっています。それほど広くもない居間に全員が収まるのは、ムーミン谷の…

集成版『NAGISAの国のアリス』第八章(完)

(71) 第八章(終章)。 春陽堂『明治大正文学全集』は改造社『現代日本文学全集』(1926年-1931年・25万部)に続く「円本」として刊行、発行部数15万部。 ●春陽堂明治大正文学全集全60巻 出版年 : 昭和2年(1927)-昭和7年(1932) ●第1巻東海散土篇佳人之奇遇 矢野…

集成版『NAGISAの国のアリス』第七章

♥ (61) 第七章。 ハートのキングは白ウサギに、ジャックの告訴状を読み上げるよう命令しました。白ウサギは開廷合図のトランペットを3回吹くとポケットから巻物を取り出して広げ、朗々と歌い出しました。 「♪夏にまるまる1日がかりで ハートのクイーンが作っ…

集成版『NAGISAの国のアリス』第六章

(51) 第六章。 帽子屋と三月ウサギとネムリネズミがお茶会用のちゃぶ台を運んできて自分の席に着きました。そこにアリスもやってきます。 席はないぞ!と帽子屋とウサギ。空いてるじゃない、とアリスは言って、いちばんいい席に座りました。しぶしぶウサギが…

集成版『NAGISAの国のアリス』第五章

(41) 第五章。 10歳のアリスはお姉さんのロリーナ(13歳)と妹のエディス(8歳)と一緒に川のほとりに座り、ドジソン先生のお話を聞くのが好きでした。ドジソン先生は当年とって30歳、男ざかりの数学の先生で、年ごろの男性にはよくあることですが同年輩の男も苦…

集成版『NAGISAの国のアリス』第四章

(31) 第四章。 ようやく着いたよ、とカッパとサルとイヌは海岸で大きく伸びをしました。遊んでいられる夏も再来年に卒業を控えた大学時代のこの年が最後ですから、三匹は学生時代最後のレジャーを満喫するため予算の許す限りの国内の南国で過ごしにやってき…

集成版『NAGISAの国のアリス』第三章

(21) 第3章。 ウサギが素早く生け垣の下のウサギ穴に飛び込むのをぎりぎり見とどけたアリスは、一瞬の躊躇もせずに自分も穴に飛び込んだのでした。もちろん後先考えず、出る時はどうするのかも考えずにです。 ウサギ穴はしばらくのうちはトンネルのように真…

集成版『NAGISAの国のアリス』第二章

(11) 第二章。 正月、真昼、場所は川辺。あと必要なのはサルとイノシシとキジね、とアリスは言いました。私そんなこと言いません、とアリス。どうしてかね、旅のお伴は多い方が楽しくないかい?だから水玉の服も着なくちゃね、とドジソン先生は言いました。…

集成版『NAGISAの国のアリス』第一章

(1) 10歳のアリスはお姉さんのロリーナ(13歳)と妹のエディス(8歳)といっしょに川のほとりに座り、ドジソン先生のお話を聞くのが好きでした。ドジソン先生は当年とって30歳、男ざかりの数学の先生で、年ごろの男性にはよくあることですが同年輩の男も苦手なら…

集成版『夜ノアンパンマン』第八章(完)

(71) 第八章。 今日もこれから降りかかってくるばいきんまんの策略などいざ知らず、アンパンマンはジャムおじさんのパン焼き場に入っていきました。ジャムおじさんおはようございます、やあアンパンマンおはよう。おはようアンパンマン、とバタコさん、わん…

集成版『夜ノアンパンマン』第七章

(61) 第七章。 不安な夢から目覚めると、ばいきんまんは自分が一個の巨大な乳頭になっているのに気づきました。普通起きると乳頭になっているなどということはほとんどありませんから、ばいきんまんもこれは悪夢の続きか、何かの冗談かと思いました。冗談だ…

集成版『夜ノアンパンマン』第六章

(51) 第六章。 アンパンマンはベッドからそのまま床に転げ落ちたのではなく、足の足の方を下にして滑り落ちるように転がったので、ベッドの縁に支えられて斜めに転げ落ちたのでした。どうやらこの感触は、さっきまで考えていたようなスマキのような状態では…

集成版『夜ノアンパンマン』第五章

(41) 第五章。 困ったことになったなあ、としょくぱんまんは改造カーナビ画面とにらめっこしながら思いました。その時しょくぱんまんの表情はいわゆる渋面を浮かべておりました。さてこの「渋面」ですが、木々高太郎という小説家が70歳の晩年(昭和42年)に刊…

集成版『夜ノアンパンマン』第四章

(31) 第四章。 わかりました、としょくぱんまんはあまりの話に腕組みをしそうになりましたが、スマートなぼくには似つかわしくないな、と思い額に手を当てました。少しうつむき加減のそのポーズは山型パンの輪郭にばっちりきまっていたので、こいつこんな時…

集成版『夜ノアンパンマン』第三章

(21) 第三章。 地獄と現実の地続きのような夢から目醒めると(アンパンマンはいつも現実的、または地獄の夢しかみません。かまどから生まれてきたからかもしれません)、しばらくしてアンパンマンは自分が乳頭になっているのに気づきました。それまではどこか…

集成版『夜ノアンパンマン』第二章

(11) 第二章。 アンパンマンは唐突、かつあまりにも飛躍したジャムおじさんの発言に、ジャムおじさんはどうかしてしまったのではないかと思いましたが、考えてみればこれまでもジャムおじさんは極端に感情や行動の振幅が激しく、かつまた自分の固執する信念…