人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

Sun Ra - New Steps (Horo, 1978)

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Sun Ra - New Steps (Horo, 1978) Full Album : http://www.youtube.com/watch?v=C1ZM7KKM9Xs&list=PLguoc2DG3sUFgV8nspKfZzOt2ZdSYHBAI
Recorded at Horo Voice Studio, Rome, January 2 & 7, 1978
Released by Horo Records Horo HDP 25-26, 1978
All compositions by Sun Ra except as indicated
(Side One)
A1. My Favorite Things (Oscar Hammerstein II, Richard Rodgers) - 7:49
A2. Moon People - 7:50
(Side Two)
B1. Sun Steps - 11:37
B2. Exactly Like You (Dorothy Fields, Jimmy McHugh) - 6:04
(Side Three)
C1. Friend and Friendship - 6:58
C2. Rome at Twilight - 5:08
C3. When There Is No Sun - 4:37
(Side Four)
D1. The Horo - 15:33
[ Sun Ra Quartet Featuring John Gilmore ]
Sun Ra - piano, Crumar Mainman organ, vocals
John Gilmore - tenor saxophone, percussion, vocals
Michael Ray - trumpet, vocals
Luqman Ali (Edward Skinner) - drums
(Original Horo Records "New Steps" LP Liner Cover & Side One Label)

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 発掘盤のソロ・ピアノ・コンサートのライヴ『Piano Recital - Teatro La Fenice, Venezia』(Leo, 録音1977年11月24日/発売2003年)や、録音時期の不確かなライヴ盤『The Soul Vibrations of Man』『Taking a Chance on Chances (ともにSaturn, 録音1977年11月?/発売1977年)を除けば、本作はともにニューヨーク録音になる10人編成のスタジオ盤『Some Blues but not the Kind That's Blue』(Saturn, 録音1977年10月14日/発売1977年)と20人編成の2枚組ライヴ盤『Unity』(Horo, 録音1977年10月24日&29日/発売1978年)以来の新作になります。ホロ・レコーズはイタリアのインディー・レーベルで、1977年11月のヨーロッパ・ツアー中に『Unity』の販売契約と新作制作が結ばれたのでしょう。1978年1月上旬には早速ホロ・レコーズ所有のホロ・ヴォイス・スタジオで4日間のセッションが行われ、1月2日と7日録音分は『New Steps』、8日と13日録音分は『Other Voices, Other Blues』にまとめられました。どちらも8曲入りの2枚組アルバムで、『New Steps』の「My Favorite Things」と「Exactly Like You」のカヴァー2曲を除く14曲はこの2作のためのサン・ラの書き下ろし新曲です。
 この時期「My Favorite Things」のカヴァーはバンドの定番レパートリーになっていたようで、『Some Blues but not the Kind That's Blue』でも『Unity』でも演奏されていました。ただしそれらが前述の通り10人(アーケストラの標準編成)、20人(アーケストラの拡大編成)というフル・メンバーだったのに較べ、本作と姉妹作の次作『Other Voices~』はホロ・スタジオの収容規模も理由で2ホーン、キーボード(ベース・キーボード兼任)、ドラムスという変則カルテットになっており、名義もSun Ra Quartetになっている点で、従来人数に関わりなく「Astro Infinity Arkestra」や「Intergalactic Arkestra」など作品毎に宇宙人楽団を強調していた衒いがなくなっています。さらにホロ・レーベルへのカルテット作品2作に手応えを感じたサン・ラは、さらにリズムボックスとシークエンサー内蔵シンセサイザーをライヴ演奏に導入し、1月いっぱいまでイタリア各地で膨大なカルテットでのライヴ録音を録り貯め、帰国後『Media Dreams』『Disco 3000』『Sound Mirror』に編集しました。それは同じカルテット作品でもリズムボックスとシークエンサーの導入によってきわめてトランシーなテクノ・フリージャズと言うべき作品になっており、『New Steps』『Other Voices~』の70年型メインストリーム・ジャズ路線から瞬く間に変貌したサン・ラの創造的を記録する、さらに評価の高い作品になりました。サン・ラは『New Steps』の高い完成度に執着せず同月にはすぐに次の実験に入ったと思うと、本作と『Other Voices~』の刹那の美は一層輝かしく見えます。