人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

映画日記2017年1月1日~5日・黄金時代のチャップリン

 新年は大みそかに続きチャップリン映画を参拝いたしました。
自作の主演・監督・脚本家・プロデュースを一手に手がけた大映画作家チャールズ・チャップリン(1889-1977)はイギリスの旅芸人一座のコメディアン出身。2回のアメリカ巡業で勃興期の映画界に活路を見出し、1914年2月に監督・プロデューサーのマック・セネット主宰のキーストン映画社からデビューしました。同社の作品は10分~20分の短編でシナリオなしの寸劇がほとんどですが、1914年12月の契約満了までの10か月にチャップリンは35本の作品に出演。うち13作目からは監督を任され、また第33作『醜女の深情け』はセネット監督による映画史初の長編喜劇映画になりました。1914年(25歳)ですでに世界的な喜劇映画の大スターとなったチャップリンはさらに良い条件でエッサネイ映画社(1915年2月~1916年3月に15本)、ミューチュアル映画社(1916年5月~1917年10月に12本)と短編1本あたりに予算と時間をかけた製作に移り、1918年4月の初中編『犬の生活』からはついに念願の自作専用撮影スタジオを設立しファースト・ナショナル映画社から配給。同社第5作の『キッド』1921からは長編映画時代に入ります。ミューチュアル社時代にすでにチャップリンの作風は確立していますが本格的な自己プロデュース作品の始まりは『犬の生活』で、1918年以降のチャップリン作品は唯一チャップリンの主演作品ではない異色のメロドラマ『巴里の女性』(アメリカ'23.Oct.)を含み、全作品が古典的風格を備えていると言えるでしょう。『巴里の女性』の次作で1年半ぶりの主演作『黄金狂時代』からはチャップリン自身が設立に参加したユナイテッド・アーティスツ社配給になり、同作はデビュー以来の放浪紳士キャラクターの集大成といえる記念碑的作品として映画史上の名作とされます。
最後のサイレント作品となった『街の灯』の後チャップリンは寡作になり、『モダン・タイムス』1936、『独裁者』1940、『殺人狂時代』1947、『ライムライト』1952、最後の主演作『ニューヨークの王様』1957、そして監督・脚本のみの『伯爵夫人』1967を遺作に、70年代には往年の作品のリヴァイヴァル上映が大ヒットした幸福な晩年を送りました。初期短編も活気に満ちた1作毎に興味の尽きないものですが、観返す回数が多いのはやはり『犬の生活』以降の作品群です。おそらくこれらのチャップリン作品ほど今後も長い生命力を持った映画はないでしょう。1918年~1923年のチャップリン作品では『サニーサイド』『のらくら』『給料日』の3編が少し落ちますが、『犬の生活』『担え銃』『キッド』『偽牧師』は絶品、『黄金狂時代』『サーカス』『街の灯』は神がかっています。チャップリンのサイレント作品の頂点は『キッド』か『黄金狂時代』であり、生涯の最高傑作は怒りに満ちた『独裁者』と『殺人狂時代』だろうと思いますが、個々の作品についてとやかく言う気も起こらないほどチャップリン映画は最高なので、ロイドやキートンマルクス兄弟らもチャップリンという恒星を廻る惑星としての良さでしょう。日記形式の寸評では済まないので、チャップリンについて書くとしたらまた題を改めたいと思います。

1月1日(日)
チャールズ・チャップリン『犬の生活』(アメリカ'18.Apr.)*33mins, B/W, Silent with Sound
チャールズ・チャップリン『担え銃』(アメリカ'18.Oct.)*36mins, B/W, Silent with Sound
チャールズ・チャップリン『サニーサイド』(アメリカ'19.June.)*29mins, B/W, Silent with Sound

1月2日(月)
チャールズ・チャップリン『キッド』(アメリカ'21.Feb.)*50mins, B/W, Silent with Sound
チャールズ・チャップリン『のらくら』(アメリカ'21.Sep.)*31mins, B/W, Silent with Sound
チャールズ・チャップリン『給料日』(アメリカ'22.Apr.)*21mins, B/W, Silent with Sound
チャールズ・チャップリン『偽牧師』(アメリカ'23.Feb.)*40mins, B/W, Silent with Sound

1月3日(火)
チャールズ・チャップリン『黄金狂時代』(アメリカ'25.June)*81mins, B/W, Silent with Sound

1月4日(水)
チャールズ・チャップリン『サーカス』(アメリカ'28.Jan.)*69mins, B/W, Silent with Sound

1月5日(木)
チャールズ・チャップリン『街の灯』(アメリカ'31.Jan.)*83mins, B/W, Silent with Sound
・最後のサイレント作品。