人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

Sun Ra - Hiroshima (Stars that Shine Darkly, vol. 1) (Saturn, 1985)

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Sun Ra - Hiroshima (Stars that Shine Darkly, vol. 1) (Saturn, 1985) Full Album : http://www.youtube.com/playlist?list=PLw8LyVak009GdIJJWevlFC4XzcV767T_P
Recorded Live in Montreux, Switzerland, November 2-5, 1983 (Side A).
Recorded live at unknown place but surely in Europe, November 1983 (Side B).
Released by El Saturn Records Saturn 10-11-85, 1985 (Matrix number Sun Ra 11-83 A/B)
All composed and arranged by Sun Ra
(Side A)
A1. Stars That Shine Darkly (part 1) - 14:50
[ Sun Ra All Stars ]
Sun Ra - piano
with Sun Ra All Stars
Lester Bowie - trumpet
Don Cherry - trumpet, vocal
Archie Shepp - soprano saxophone, tenor saxophone, vocal
Marshall Allen - alto saxophone
John Gilmore - tenor saxophone
Eloe Omoe (prob.) - bass clarinet
Richard Davis - bass
Philly Joe Jones - drums
Clifford Jarvis - drums
Famoudou Don Moye - percussion
Cf. [ Sun Ra - All Stars 1983-October-29 Berlin, Germany, Philharmonie, Jazztage 1983 ] : https://youtu.be/vAVXGWEumUc
0 [00:00] Announcement MichaelNaura
1. [04:00] Happy Birthday / Stars That Shine Darkly
2. [16:15] Title (D.Cherry - trumpet & Philly Joe Johnes - drums Duo)
3. [20:30] Somewhere Else
4. [28:55] Early Morning Blues
5. [38:10] Poinciana
Total Time: 54:10
[ Sun Ra All Stars ]
Same as "Stars That Shine Darkly (part 1)"
(Side B)
B1. Hiroshima - 15:05
[ Personnel ]
Sun Ra - pipeorgan
with unknown bass, drums.

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Sun Ra - Outer Reach Intensity-Energy (Stars that Shine Darkly, vol. 2)
Recorded live surely on 1983 or 1984 (Side A).
Recorded live in Montreux, November 2-5, 1983 (Side B).
Released by El Saturn Records Saturn Gemini 9-1213-85, 1985
All composed and arranged by Sun Ra
(Side A *all no links)
A1. Outer Reach Intensity-Energy - 4:06
A2. Cosmos Rendezvous - 4:31
A3. Barbizon - 4:00
A4. The Double That... - 5:01
A5. The Ever Is... - 4:05
[ Sun Ra And his Arkestra ]
Sun Ra - organ
Ahmed Abdullah - trumpet (en Cosmos Rendezvous)
Michael Ray - trumpet
Fred Adams, Al Evans, Martin Banks, or Ronnie Brown (poss.) - trumpet
Marshall Allen - alto saxophone
John Gilmore - tenor saxophone
Eloe Omoe - alto saxophone, bass clarinet, contra-alto clarinet
James Jacson - basoon, percussion
Danny Ray Thompson - baritone saxophone, modified basoon (on The Ever Is...)
2 unknown - drums
Cf. [ Sun Ra Arkestra Live in West Berlin 1983 ] : https://youtu.be/eFiUo1zQdcA
(Side B)
B1. Stars That Shine Darkly (part 2) - 23:26
[ Sun Ra All Stars ]
Same as "Stars That Shine Darkly (part 1)"

 1982年9月録音の「Nuclear War」セッションは1979年3月のスリーマイル島原発事故以来サン・ラが構想していた反核メッセージが込められたもので、サン・ラは当初メジャー・レーベルへの売り込みを図りコロンビアに持ち込みましたが不成功に終わりました。イギリスのインディー・レーベル、Yからは12インチ・シングル「Nuclear War c/w Sometimes I'm Happy」が82年末に発売されアルバム『Rays From the Outer Tomorrow』がサンプル盤のみ制作されましたが発売中止になってしまいます。そこでサターン・レーベルから『A Fireside Chat with Lucifer』と『Celestial Love』が1983年に発売されますが、ようやく1984年に『A Fireside~』と『Celestial~』から選曲し「Nuclear War」をアルバム・タイトル曲にフィーチャーした『Nuclear War』がYレコーズのイタリア支局から発売、さらにYレコーズ経由でギリシャのミュージック・ボックス社からもリリースされます。この間サン・ラ・アーケストラは何をやっていたかというと、『Sunrise in Different Dimensions』(Hat Hut, 1980.2録音)以来の国際ツアーをしていました。'82年録音のライヴ盤『Ra To the Rescue』の後にはアルバム『Just Friends』が1983年にリリースされますが内容は1950年代録音の既発表曲が大半で初登場テイクは2曲のみ、また1983年3月~5月のヨーロッパ・ツアーでツアー終盤にエジプトのジャズマンでパーカッショニスト/バンド・リーダーのサラ・ラガブとのジョイント・アルバム『Sun Ra Arkestra Meets Salah Ragab in Egypt』(Plaxis, 1983)をスタジオ録音します。内容はラガブのリーダーシップによるもので、これもリンクが引けず残念ながらアルバム・リリースのご紹介のみに留めます。
 アーケストラは6月は帰国して休んだ後(手製サターン盤の制作仕事はありますが)7月は再びオーストリアから始まるヨーロッパ・ツアーに出ます。一旦帰国、9月のカナダ巡業を挟んで10月から翌'84年1月までは1983年の第3次ヨーロッパ・ツアーをイギリスを始めにフランス、イタリア、スイス、西ドイツと周り、さらに同コースを2巡した後で年明けまたもやカイロ巡業に周ります。カイロ巡業は先のサラ・ラガブとの共演盤と同じエジプトのプラクシス・レーベルに大量に録音されましたが(これらもリンクが引けませんが)、その前にサターン・レーベルから1983年11月2日~5日のモントルー・ジャズ祭で収録されたとされる3枚のアルバムがあります。それが今回ご紹介の2枚と、2枚にまたがる大曲「Stars That Shine Darkly」の「Part 1」をA面、「Part 2」をB面に収めたアルバム『Stars That Shine Darkly……』で、3枚とも1985年発売のため例によってサターン盤の発売日はよくわからないのです。「Stars That Shine Darkly Part 1」は『Hiroshima』A面に収められ『Hiroshima』B面はサン・ラの実質的なオルガン・ソロ(ベースとドラムスも入りますが)、また「Stars That Shine Darkly Part 2」は『Outer Reach Intensity-Energy』B面に収められA面はアルバム・タイトル曲以下5曲のサン・ラ・アーケストラのライヴで1984年録音説もあり、サン・ラのオルガンをフィーチャーして「Hiroshima」に近い演奏内容の素晴らしいテイクが並びますが残念ながらこのA面のリンクは見当たりませんでした。代わりに『Hiroshima』でサン・ラ・オールスターズ(ものすごいメンバーです)のライヴ映像を参考リンクを引いたのと同様、この年のヨーロッパ・ツアーからのサン・ラ・アーケストラのライヴ映像を参考リンクに引きました。
 アルバム『Stars That Shine Darkly』は上記2作に完全に内容が重なるので、アルバム『Hiroshima』のリンクはオリジナル『Hiroshima』に「Stars That Shine Darkly Part 2」を合わせた内容です。オールスターズのゲスト・メンバーはジャズ祭ならでは実現した、'50年代から生き抜いてきたものすごい顔ぶれで、ライヴ映像で面構えをご覧ください。誰一人カタギの顔をしていません。ドン・チェリーにしろアーチー・シェップにしろレスター・ヤングとドン・モイエ(アート・アンサンブル・オブ・シカゴ)にしろ(さすがに天才フィリー・ジョー・ジョーンズやリチャード・デイヴィスは例外でしょうが)サン・ラがつねづね「あいつらなんかチョロい」とフォロワー呼ばわりしてきた強者ジャズマンたちですが、はっきり言って「Stars That Shine Darkly」は'60年代型の古いスタイルのフリー・ジャズです。このメンバーが一番合わせやすいのもこれだったわけで、精神性の面から音楽を聴くのは敬遠されがちですが、精神性の高さや高揚、訴求欲求がテンションの高い演奏を生むのは見逃せず、それはサン・ラのソロ・オルガン曲「Hiroshima」にもオールスターズの「Stars That Shine Darkly」でも言えます。そうして生まれる演奏にスタイルの新旧などがどれほどのものでしょうか。