ヴェルヴェット・アンダーグラウンド Velvet Undeground - Squeeze (Polydor UK, 1973) Full Album : http://www.youtube.com/playlist?list=PL6F10373EE7FA68C5
Recorded at London, England, United Kingdom, October 1972
Released by Polydor Records UK 2383-180, February 1973
Produced by The Velvet Underground
All songs written by Doug Yule.
(Side A)
A1. Little Jack - 3:25
A2. Crash - 1:21
A3. Caroline - 2:34
A4. Mean Old Man - 2:52
A5. Dopey Joe - 3:06
A6. Wordless - 3:00
(Side B)
B1. She'll Make You Cry - 2:43
B2. Friends - 2:37
B3. Send No Letter - 3:11
B4. Jack & Jane - 2:53
B5. Louise - 5:43
[ Personnel ]
Doug Yule - lead vocals, guitars, keyboards, bass guitar, producer
Additional musicians (probably)
"Malcolm" - saxophone (possibly Malcolm Duncan)
Ian Paice - drums, possible percussion
Unidentified female backing vocals
*
(Original Polydor UK "Squeeze" LP Liner Cover & Side A Label)
1972年秋のヨーロッパ・ツアー終盤のロンドンでマネジメントの指示によってダグ・ユール以外のメンバー(モーリン・タッカー=ドラムス、ウィリー・アレキサンダー=キーボード、ウォルター・パワーズ=ギター)が先にアメリカに帰国させられ、メンバーからはユールひとりがロンドンの現地セッションマンを迎えて録音したアルバムが本作です。続く同年12月にはイギリス国内でのアルバム先行プロモーション・ツアーが行われますが、それもユール以外はロンドンで活動していたセッションマンがツアー限定で雇われたのです。ユールが帰国するとすでに元のメンバーは全員バンドを解雇され、または脱退していました。アルバムはポリドール・レコーズのイギリス支社から原盤が発売され、同時にフランス、同年中にドイツ、翌74年にスペイン、また日本盤(発売年未詳)も発売された記録がありますがアメリカ本国では発売されず、どの国でもシングル・カット曲はなく、70年代と80年代初頭にフランス盤が再プレスされましたが長らく廃盤になっていました。ディスコグラフィー上、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドのスタジオ・アルバム5作目でありながら数あるベスト・アルバムに本作からの曲は収録されたことはなく、1995年の5枚組CDのヴェルヴェット・アンダーグラウンドの全集ボックス『Peel Slowly and See』でも収録対象外になり、音楽誌・音楽サイトでもヴェルヴェットの歴史からは幻滅必定の蛇足で無価値と評価されています。イギリスの音楽誌「Classic Rock」誌の2012年3月号の企画「The 50 Worst Albums of All Time」では本作は28位とかなりの票を集めました。
本作がようやくLP再発とともに初CD化されたのは2012年、イギリスの稀少盤専門復刻インディー・レーベル、Kismetからでしたが、マスターテープが発見できず原盤権所有者も不明になっているため、やむなくLPレコードからデジタル・リマスタリングして再発売されました。非常に丁寧なリマスタリングで音質には問題ありません。ブックレットには当時の好意的なレコード評が再録され、またレーベルからの注意書きで上記の事情から結果的に無断再発売に踏み切らずを得なかったことと「印税を支払うので版権所有者、または所在をご存知の方はお知らせください」とレーベルの連絡先が記されています。CDケース裏面には曲目表と簡単な解説があり、解説は「A Velvet Underground Album in name only, this is in fact a solo set by the band's latter-day leader Doug Yule.」(ヴェルヴェット・アンダーグラウンドのアルバムとは名ばかりで、本作はバンドの後期リーダーのダグ・ユールのソロ作品です)と正直に明記されています。全曲ユールのオリジナル曲、バンド(事実上ユール)のプロデュース作品ですからKismetレーベルもイギリスのポリドール・レコーズとダグ・ユール双方に正式な版権取得による再発売を打診したはずですが、レコード会社にもユールにも原盤権はなく、それどころかユールに楽曲著作権すらなかったのでしょう。ヴェルヴェットはアンディ・ウォホールのお抱えバンドだった1966~67年から1968年にはピンハネで悪名高いスティーヴ・セズニックのマネジメントに所属が変わり、嫌気がさしたジョン・ケイルが辞めてダグ・ユールが後任に加入した経緯がありますが、1970年8月にリーダーだったルー・リードまで辞めてしまってユールを後任リーダーにしてバンドを続けさせたのもセズニックでした。ほぼ確実にセズニックのマネジメントがユールの楽曲著作権、本作の原盤権を握っていたと思われますが、ポリドール経由でもユール経由でも、また八方手を尽くしても『Squeeze』の版権所有者を突き止められなかったのでしょう。どさくさ紛れに譲渡されてしまった、あるいは融資または借金のかたに他の資産ともども差押さえられてしまい、そのまま質流れ同様に第三者によって売却されてしまった可能性もあります。Kismet盤CDは発売5年後の現在でも普通の輸入盤店、通販ショップで手に入りますから、どうやらどこからもクレームはないようですが(ユールにも妥当な額の印税を払ってあるのでしょう)、いつ発売差し止め・在庫回収になるかわかりません。ロック史上最悪のアルバム50選中28位、気になる方は試聴の上購入をご検討されてはいかがでしょうか。