人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

ジュセッピ・ローガン The Giuseppi Logan Quartet - ブリーカー・パルティータ Bleeker Partita (ESP, 1965)

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ジュセッピ・ローガン・カルテット The Giuseppi Logan Quartet - ブリーカー・パルティータ Bleeker Partita (Giuseppi Logan) (ESP, 1965) : https://youtu.be/MoamXgGCx_k - 15:24
Recorded at Bell Sound Studios, New York City, October 5, 1964
Released by ESP Disk 1007 as album "The Giuseppi Logan Quartet", 1965
[ Personnel ]
Giuseppi Logan - alto and tenor saxophone, Don Pullen - piano, Eddie Gomez - bass, Milford Graves - drums

 ジュセッピ・ローガンのもう一つの名曲を上げれば、アルバム『The Giuseppi Logan Quartet』のクロージング・ナンバーでアルバム中最長の大曲のこの「ブリーカー・パルティータ」でしょう。ローガン自身のオリジナル曲全5曲・48分8秒のこのアルバムは、1964年10月5日の1セッションで録音されているので、アメリカのレコーディング・スタジオは3時間が単位ですから楽器の搬入とセッティングとマイク配置、ESPディスクのようなインディー・レーベルでは後からダビングや編集、ミキシング作業をする余裕はないのでマイク・テストでミックスを決めると、楽器の解体・搬出も3時間のうちに終わらせなければなりませんから全5曲48分を1テイクずつ一発録りすればそれでアルバムは完成で、あとはLP用マスター・テープを作成する時に曲順を組み直す程度だったと思われます。ESPの第1回リリースのアルバート・アイラーバイロン・アレンのアルバムはもっと短く、使用楽器の種類(特に搬入出、組み立て・解体に手間のかかるドラム・セット)もシンプルでしたし、特にアイラーの場合は後年発掘されたアルバム録音直前の日のライヴ音源で、ESPに録音するアルバムの全曲を細部のアレンジまで完全に完成させていたのが判明しています。それに較べるとローガンのアルバムは演奏の不安定さからもリハーサルの不足がうかがわれ、この曲なども実によれよれの進行でアレンジなど基本的なリフ以外は決めていなかったと思われ、その不安定さがこの変な曲をユニークな演奏にしています。
 ジュセッピ・ローガンは'66年を最後に2008年まで謎のジャズマンの筆頭に上がるような人でしたが、渡辺貞夫(1933-)氏のアメリカ留学時の回想にローガンについての言及があります。渡辺氏が1962年から1965年までボストンのバークリー音楽院に、先に同音楽院に学んだ穐良敏子(1929-)に招かれて留学した時、最初に知り合った現地のジャズマンがジュセッピ・ローガンだったそうで、ローガンは渡辺氏のアパートに楽器持参で訪ねてきたそうですが、渡辺氏はローガンの演奏を「速く吹いているだけ」と評しており、それ以上つき合いはしなかったようです。そういう簡略な回想でした。ところがもっと正確な引用をしようと思って、渡辺氏の回想記『ぼく自身のためのジャズ』'69(昭和44年・荒地出版社刊)を読み返してみると、ローガンについての言及が見当たらない。やはりフリー・ジャズのジャズマン、プリンス・ラシャを「ひどいアルトで頭に来た」というのは記憶通りありましたが、渡辺貞夫がジュセッピ・ローガンに会った、しかも「速いだけ」というのはあまりに意外性があって記憶に鮮やかなので、出典は別にしても読んだことがあるのは確かです。また渡辺氏がローガンの人種について触れていなかったのも覚えているので、実際のところどうなのでしょうか、筆者の記憶違いでしたら身も蓋もない話ですが、今では当人たちも覚えておられないのではないでしょうか。せっかくですので、今回はアルバム全曲の試聴リンクを上げておきます。

(2010年、路上演奏中のジュセッピ・ローガン)

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The Giuseppi Logan Quartet (ESP1007, 1965) Full Album : https://www.youtube.com/playlist?list=PL-8A6JyMZIrQmc_P1XW394LVqE0enISdR