人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

クラウス・シュルツェ Klaus Schulze - ドスブルグ・オンライン Dosburg Online (WEA, 1997)

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クラウス・シュルツェ Klaus Schulze - ドスブルグ・オンライン Dosburg Online (WEA, 1997) : https://youtu.be/PCixpv_WChE : https://youtu.be/K6h46L1R1GA : https://youtu.be/6VHCpFmxBls (excerpts)
Recorded at Hambuhren, KS Moldau Musik Studios, 1997
Released by WEA Records Eye Of The Storm 3984 20656-2, November 24, 1997
Produced and Composed by Klaus Schulze except where noted.
(Tracklist)
1. L'Age core - 11:50
2. Requiem furs Revier (K. Schulze, Lorraine Oostwoud) - 15:01
3. Groove'n'Bass - 6:16
4. Get Sequenced - 3:28
5. The Power of Moog - 4:47
6. Up, Up and Away - 8:21
7. From Dawn Til Dusk - 4:01
8. The Art of Sequencing - 18:21
9. Requiem furs Revier (K. Schulze, Lorraine Oostwoud) - 7:02
[ Personnel ]
Klaus Schulze - keyboards, drum machine, sequencers
Jorg Schaaf - keyboards, sequencers
Rolof Oostwood - operatic vocals on 2, 9

(Original WEA "Dosburg Online" CD Liner Cover)

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 20世紀中最後のクラウス・シュルツェの単発アルバムになったのが本作『ドスブルグ・オンライン』で、前作『アー・ユー・シークエンスド?』のディスク1同様シームレスの、アルバム1枚を通して1曲になる作りながら、セクションごとには前作以上にはっきりと9曲分のセクションに分かれた、すっきりと聴き易いシングル・アルバムになりました。単発アルバムとしては33作目になる本作ですが、シュルツェは完全未発表音源集『Silver Edition』'93(CD10枚組)、『Historic Edition』'95(CD10枚組)に続いてさらに『Jubilee Edition』'97(CD25枚組)を本作に先立ってリリースしており、これら完全未発表音源集をCD1枚ずつアルバム枚数にカウントすると本作はシュルツェ78枚目のアルバムに当たります。シュルツェは上記3セットを増補改訂し2000年には『The Ultimate Edition』(CD50枚組)にしてリリースし、また同時に完全新録音の未発表音源集『Contemporary Works I』(CD10枚組)をリリースするので(続編のCD5枚組『Contemporary Works II』は2002年リリース)、21世紀最初の単発アルバム『Live@KlangArt』2001はライヴ・アルバムですし、次の単発アルバムは2005年の『Moonlake』になるので、単発アルバムが途絶えた1998年~2000年、2002年~2004年、2010年~2012年の時期はシュルツェは未発表音源の整理に当たっており、『Contemporary Works』から単発アルバムに整理する作業は2005年~2008年にまず7作のアルバムとして再リリースされており、『The Ultimate Edition』からは年代順に3枚組単位の『La Vie Electronique』全16集として2009年~2015年に再リリースされ、さらに『Contemporary Works』からの未単発アルバム化も再開されて、2016年から現在までに新たに5作が追加リリースされています。
 ボックスセットとその再リリース、21世紀以降のシュルツェの新作は筆者もすべて追いきれていないので、ここでは20世紀内シュルツェのアルバムを単発アルバムにしぼり、次回からはシュルツェの参加してきたバンド作、プロジェクト作、セッション作をデビュー時にさかのぼってたどっていきたいと思いますが、シュルツェが20世紀内最後の単発アルバムにした本作は前々作『イン・ブルー』'95で'70年代の作風に立ち戻った成果が良い具合に'80年代末~'90年代前半のサンプリング時代のテクノなシュルツェと調和した好作になりました。サンプリング時代のシュルツェも圧倒的にパワフルなサウンドと楽想ですごかったのですが、後期ロマン派の古典に互さんというばかりの意欲が音楽を思い切り重厚にしていて、シュルツェに本来あるヒッピー的な楽天性や軽やかさは覆い隠されていた観があります。サンプリング時代にシュルツェが'70年代以上に多作だったのはシュルツェ自身にとっても勢いに乗っているうちにやりきってしまおうという意識があり、この方向性はシュルツェの一面の達成ではあっても通過点という自覚があったからと思われます。本作がすっきりとした仕上がりになったのは5年間で10作(ほとんどがCD2枚組大作)の多作なサンプリング時代が渾身の大作『Das Wagner Desaster Live』'94で区切りがついてからの『イン・ブルー』や未発表音源整理がシュルツェにもたらした成果であり、50歳記念でありソロ・デビュー作『イルリヒト』'72から25周年目だったのも、本作で20世紀内の単発アルバムを締めようという意図になったように思われます。