人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

スタン・ゲッツ・フィーチャリング・アストラッド・ジルベルト - オンリー・トラスト・ユア・ハート Only Trust Your Heart (Verve, 1964)

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スタン・ゲッツ・フィーチャリング・アストラッド・ジルベルト Stan Getz Quartet Featuring Astrud Gilberto - オンリー・トラスト・ユア・ハート Only Trust Your Heart (Benny Carter, Sammy Cahn) (Verve, 1964) : https://youtu.be/XqWjOKLwC1o - 4:41
Recorded live at Cafe Au Go Go, New York City, May 22, 1964
Released by Mercury/Verve Records as the album "Getz Au Go Go", Verve
V6-8600, Mid December 1964
[ Stan Getz Quartet Featuring Astrud Gilberto ]
Stan Getz - tenor saxophone, Astrud Gilberto - vocals, Gary Burton - vibes, Gene Cherico - bass, Helcio Milito - drums

 ジョニー・ホッジスと並ぶジャズ・アルトサックスの開祖ベニー・カーター(1907-2003)はたいへん長命、しかも晩年まで衰えを知らなかった巨匠中の巨匠で、非常に珍しいですがトランペット奏者としても一流ならばビッグバンド・リーダーとしても一流で、作曲も素晴らしいという生けるアメリカの20世紀ジャズ史みたいな人でした。そんな巨匠のさりげない名曲をさりげなく取り上げてボサ・ノヴァ・リズムのヴォーカル・バラードにしてしまったという小癪なヴァージョンがこれで、この曲もライヴ・テイクにアストラッド・ジルベルトのヴォーカルをオーヴァーダビングしたものですが、ピアノやギターも加えずテナー、ヴィブラフォン、ベース、ドラムスの簡素なカルテットがこの曲ではひときわ光っていて、編集によってイントロ+ヴォーカルが1コーラス、テナーサックス・ソロが1コーラス、ヴォーカルが1コーラス+コーダ、と構成も簡素極まりないものです。しかしこの素人を連れてきて歌わせたようなムードだけの女性ヴォーカル、ほとんどテーマそのまんまのテナーソロが雰囲気一発でかもし出す心地よさは天国的なほどで、美しい歌詞とあいまって可憐な愛らしさは類を見ない純潔さに達しています。ジャズの名曲名演と訊かれた時にこの曲がすぐさま浮かぶリスナーはあまり多くないと思いますが、今でもゲッツやアストラッド・ジルベルトが愛されているのはこういう名演があるからでもあり、『ゲッツ・オウ・ゴー・ゴー』が隠れ名盤でもあるゆえんです。