人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

映画監督・ジャン・ルノワール

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ジャン・ルノワールは多彩な作風と題材ですがどれも素晴らしい作品ばかりです。年代順に思いつくまま挙げていくと「のらくら兵」「素晴らしき放浪者」(「ビバリーヒルズ・バム」としてリメイクあり) 「牝犬」「ボヴァリー夫人」「ゲームの規則」「大いなる幻影」「ピクニック」「トニ」「黄金の馬車」「河」「フレンチ・カンカン」「恋多き女」など。
最高傑作は自分で主演までしてしまった「ゲームの規則」でしょう。これは戦時下のブルジョワ階級のコメディに見せかけながらラストでは階級の崩壊までスケールを拡げる、E.M.フォースターの「ハワーズ・エンド」を連想させる黙示録的傑作です。
一作毎に素晴らしさを解説していけばきりがありません。「ピクニック」「河」の牧歌的な美しさと哀感、「ゲームの規則」の系列作と言える「素晴らしき放浪者」「黄金の馬車」「フレンチ・カンカン」「恋多き女」の破天荒さ、「牝犬」「トニ」の痴情犯罪リアリズム、「のらくら兵」「大いなる幻影」の反戦メッセージなど、題材は多彩でありながらルノワールの映画はどれも柔軟な発想と精気に満ちています。機会がありましたらぜひ。
フレンチ・カンカン」はテクニカラーが美しく、ストーリーなんかあってないようなもので、「父親ゆずり」と言われたルノワール好みの豊満な踊り子たちが踊りまくります。「ピクニック」は珠玉の小品(40分)。モーパッサンの短篇を原作に長篇映画のつもりで撮り始めたら制作中断の憂き目にあい、撮影分だけで編集したらたった40分だけど胸に迫るような傑作ができた、という背景があります。ピクニックをぶち壊すスコールのシーン(ネタバレ失礼)ときたら!
ルノワールアメリカ映画も撮っています。「浜辺の女」。いわゆるフィルム・ノワールの低予算犯罪スリラーなのですが、こんな仕事まで引き受けてしまうのがいかにもルノワールらしく、映画もスリラーとして十分な佳作になっています。
図版は上がアメリカ上映版「ゲームの規則」のポスター。「不思議の国のアリス」めいたこの映画の悪夢感をよく現しています。
中は「素晴らしき放浪者」。一人のホームレスがブルジョワ家庭に居候になって無茶苦茶にする、こちらを最高傑作とする人も多い作品。
下は前述「浜辺の女」です。ムードありますね。本編も期待を裏切りません。