アーサー・リー(1945-2006)と彼の率いたロサンジェルスの伝説的バンド、ラヴの物語は同郷のビーチ・ボーイズ、ザ・バーズ、ザ・ドアーズを包括し、ある意味では越えるものだ。
「アメリカ人の人生に第二章はない」とはよく言われる言葉だが、上記のロック・バンドも例外なく一度は「終ってしまった」キャリアを持つ。映画「ザ・ドアーズ」などはジム・モリソンの死をもってバンドの終焉としているが、ジム・モリソン没後もザ・ドアーズは断続的ながら活動を続けている。ザ・ドアーズとはレイ・マンザレクのバンドだったということだ。
ビーチ・ボーイズ、ザ・バーズの場合も解散したのか活動休止中なのかはっきりしない状態を繰り返している。たぶんスペシャル・コンサートのかたちでもなければかつてのメンバーたちは集結しないだろう。物故したメンバーも多い。それでもブライアン・ウィルソンやロジャー・マッギンがソロでやっている音楽がビーチ・ボーイズであり、ザ・バーズであることにかわりはない。
ラヴの場合はアーサー・リーがそうだ。バンドとしてはギタリストのブライアン・マクリーンも初期の3作で数曲ずつ提供し、そのどれもがアルバムのハイライト・ナンバーになった。だがアーサー・リーがいるからこそラヴ、アーサー・リーが歌えばラヴなのだ。
(事実、サード・アルバムの発表後リー以外の全員がドラッグ使用で逮捕され、第四作からはメンバー総入れ替えになっている)
リーの最後の輝きは2003年のアルバム「フォーエヴァー・チェンジズ」全曲再現全英ツアーで、これはライヴ・アルバムとDVDになった。58歳、数年前に近所とのトラブルで銃の発砲事件を起こして刑務所暮しもしているが、ロック・フェスで10万人の観客を前に過去の名曲を連発する姿は誇らしい(YouTubeで見られます)。3年後に癌で亡くなる人には見えない。
思いつくまま書いていたらとっくに1回分の文字数を超えてしまったので、続きは後編にしてアルバムの紹介します。掲載図版はラヴのファースト・アルバムからサード・アルバム。レーベルはエレクトラからリリース。上から、
●「ラヴ」'Love'(4/1966:#57)
●「ダ・カーポ」'Da Capo'(1/1967:#80)
●「フォーエヴァー・チェンジズ」'Forever Changes'(12/1967:#154)