人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

ディラン『シー・ビロングス~』

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 ボブ・ディラン(1941-)のロック転向第1作(通算5作目)「ブリンギング・イット・オール・バック・ホーム」'Bringing It All Back Home'1965(写真上)収録、原題'She Belong To Me'。カヴァーは意外に少なく、ザ・ナイス(キース・エマーソン在籍)「クラシック+ジャズ/ロック=ナイス」1969(写真下)が知られているくらいか。
 ディランには大別してバラッド(叙事詩、物語歌)とリリック(叙情詩、恋愛歌)の系列がある。これはフォーク自体の伝統だが、では今回の曲はというとどちらでもあってどちらでもない。フェイブルFable(寓意・寓話歌)としか言えない。ジョン・レノンミック・ジャガーを直撃してロックの歌詞を一新したのは、当のディラン自身にも作例が少ないこの路線かもしれない。なぜ少ないか?そのあたりを考えてお読みください(タイトルを訳すなら『彼女はぼくのもの』でいいと思う)。

『シー・ビロングス・トゥ・ミー』

彼女は必要なものはすべて持っている
彼女は芸術家、振り返ったりはしない
彼女は必要なものはすべて持っている
彼女は芸術家、振り返ったりはしない
彼女は夜から暗闇を取り出して
昼を黒く塗ることだってできる。

きみは立ちつくしたままで彼女が
見るものすべてを盗もうとする
きみは立ちつくしたままで彼女が
見るものすべてを盗もうとする
だけど結局きみは膝まずいて
彼女の鍵穴から覗いてみるしかない。

彼女はけっしてよろめかない
彼女は落ちる場所がない
彼女はけっしてよろめかない
彼女は落ちる場所がない
彼女はだれの子供でもないから
法律も彼女には触れられない。

彼女はエジプトの指輪をしている
それは語るより前に光る
彼女はエジプトの指輪をしている
それは語るより前に光る
彼女は催眠術で収集する
きみは歩くアンティークになる。

日曜には彼女にお辞儀し
誕生日になれば挨拶を
日曜には彼女にお辞儀し
誕生日になれば挨拶を
ハロウィンにはトランペットをあげて
クリスマスには太鼓を買ってやれ。
(前記アルバムより)

 率直に言って謎めいた歌詞だと思う。「きみ」は文字通り他人の「きみ」なのか、自問自答か。タイトルと歌詞の関係は?