人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

日記(2月9 日~10日 )

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…こんなかたちでなら会いたくはなかった。それは向うも同じだろう。考えたことすらなかった。ぼくは寝つけず、隣で寝入っているふたりがいらだたしくなり、ふたりをいっぺんに抱きしめながら思った。こんなふうに妻と娘ふたりの家族一緒だった寝室でまたぼくが寝るとしても、こんなことではなかった。
逆の事態なら時おり考えた。ぼくの父は全身麻痺が進んで会話や歩行、座っていることすらままならない。そしてぼくは先の見えない精神疾患の病人だ。もっとも別れた妻からは姻戚関係すらない今、ぼくの実家とは一切関らないと言われている。妻自身はともかく、娘たちには少々残酷なのではないかと思う。
「ぼくの場合はどうしようか?」
妻はさすがに言葉に詰まって小さな溜息をつき、
「それは…知らせてちょうだい」
「実家ももう無縁だから、市の福祉課か医療機関から知らせが行くよ。連絡先にしておいていいね?」
「いいわよ…もういい?用件が他にないなら…」
「いつも娘たちをありがとう。娘たちによろしく」
先週はヴァレンタインと進級の両方を兼ねて贈り物を揃え、今週は包装して郵送し、娘たちのことは一日だって忘れないが久しぶりに夢にまで見て、精神科の受診で、
「『お嬢さんたちにはもう会えないと思ってる?』
『はい』とぼく、『なにかの節目に向こうから言ってくるかもしれない。期待はしていない、希望は望まない、可能性はある。おたがいが望めば実現するかもしれない。それだけです』」(2月6~8日日記)
という会話になったのだった。いちばん不幸な節目、それがぼくに訪れるならば、ぼくはもう同じ世界にはいない。中原中也が「永訣」という痛切な言葉を使っている。すべての別れが永訣なら、ぼくにはその資格がある。
土曜に通夜、日曜に葬儀。みんなが来てくれるはずだ。生まれた時にはあんなに喜ばせてくれて、去る時にはこんなに胸をえぐるんだね。それともこんなふうになることでパパを呼び戻したかったのかい?でもこんなことになっても、パパは二度と抱きしめてあげることができないよ。
妻は喪主の責任でぐっすり眠っている。長女もつられるように熟睡している。好きだったアニメの「妖怪人間ベム」も昨日から再放送してるよ。でももうパパの膝でテレビを見る歳ではなかったね、パパがいなくなってからの5年間で。

…ひどい夢だ。くそ。