人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

ディラン『運命のひとひねり』

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アルバム「血の轍」'Blood On The Tracks'1974収録、ボブ・ディラン(1941-)デビュー12年目、33歳の作品。原題'Simple Twist Of Fate'。この曲も初期の別れの歌と違うのは、失恋でもなく愛の冷却でもなく、築き上げた絆が破局したという点になる。そこが20代と30代の違いと言えば簡単すぎるが、深く疲労した人間には凝った言葉など出てこないのだ(だが同アルバムには『ブルーにこんがらがって』『愚かな風』という2曲の大作もある)。そこが共感も呼べば、物足りなさを感じる点でもある。

『運命のひとひねり』

彼らは公園で座ってた
夕暮れの空が暗くなるなかで
彼女は彼を見て、彼は感じた
骨まで火花が痺れるのを
そして彼は孤独を感じて一直線に突き進もうと思い
そして運命のひとひねりに気をつけていた

彼らは古い運河に沿って歩き
ちょっと混乱していたのをおれは思い出す
それから立ち止まって変なホテルに入った
ネオンが燃えるように輝いていた
彼は夜の熱気が貨物列車のように
自分に叩きつけられるのを感じた
まるでそれは運命のひとひねりのように

サキソフォンがどこか遠くで吹かれ
彼女はアーケードを歩いていた
その時窓から溢れる陽射しで彼は
起き出したばかりの頃だった
彼女は門のところの盲人のカップにコインを
ひとつ落とし
そして運命のひとひねりを忘れ去った

彼が起き出すと部屋は空っぽで
彼女の姿はどこにも見つからなかった
気にすることはないと自分に言い聞かせ
窓を大きく開け放った
心のなかは説明できない空虚が
どこからともなくやってきた
それは運命のひとひねりだった

彼は時計が時を刻むのを聞き
しゃべるオウムを連れて歩いた
船乗りみんなが集まってくる
船着き場で彼女の姿をさがす
どれだけ彼が待っていたら彼女は
彼を見つけてくれるのだろうか
それもまた運命のひとひねりしだい

みんながおれにそれは罪だという
秘めていることにあまりに踏み込んでしまうのは
彼女はまだおれの双子だと信じている
だけどおれは指輪を失くしてしまった
彼女は春に生まれた、けれどおれは生まれるのが遅すぎた
それは運命のひとひねりのせいじゃない
(前記アルバムより)