イタリアン・ロック第四回はまだまだ大物が続く。PFM、バンコ、アレアの三大バンドより好きだ、思い入れがあるという人も多いようだ。オザンナとニュー・トロルスがそういった次点バンドの筆頭にあげられる。先にオザンナから取り上げるのは、「オザンナ・ファミリー」と呼ばれるくらい関連バンドが派生して佳作を残しており、中には本家が叶わなかったアメリカ進出まで果したバンドまであるのだ。
ただし魅力はすべてオリジナル・オザンナの4作に凝縮されているだろう。バンコやアレアも殺気をかんじさせるバンドだったが、オザンナときたら現実には存在しない日本のヤクザ映画の仁侠のように義のためならば一人一殺、いつでも殺せる・いつでも死ねるとでもいうような刹那感があった。なにを隠そう筆者が初めて買ったイタリアン・ロックのアルバムはオザンナのラスト作「人生の風景」1974(画像4)で、キング・クリムゾンを俗っぽくして朗々とイタリア語ヴォーカルが歌い上げ情念と疾走感は5割増しのサウンドにはおおっ、と驚いた。次はPFM「友よ」、そしてアレア「1978」だったと思う。
それからオザンナは再結成作「スッダンス(鹿の踊り)」1978では失望したもののオリジナル・オザンナの第一作「ル・ウォーモ」1971、第二作で傑作の世評が高いオーケストラ共演の映画サントラ「ミラノ・カリブロ9」もそれぞれ良かったが、歌詞が全編イタリア語(ナポリ方言らしい)になってLPのA面1曲・B面1曲で架空の都市を描いた第三作「パレポリ」1972(画像3)はオザンナならではの最高傑作だろう。フェリーニ映画のカーニヴァル空間との親近性を指摘する人も多いが、ちょっと違うと思う。フェリーニは外部からの描写だか、オザンナは第一作のジャケットの通り自分たちがパフォーマーなのだ。
実際オリジナル・オザンナの不動の5人は実にキャラが立っている。フルートと各種サックスのエリオ・ダンナ、ヴォーカルとアコースティック・ギター、各種キーボードのリノ・ヴァレッティ、エレクトリック・ギターのダニロ・ルステッツィ、ベースのレロ・ブランディ、ドラムスとアートワークのマッシモ・グァリーノ。2000年代になってからダニロとリノが中心になって復活しているのだが、昔の曲を打ち込みでダンス・ミックスにするという無惨なことになっている。