人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

(8)渚のザ・ワイルド・ワンズ

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本来ならブルー・コメッツ、ザ・スパイダースと並ぶ三大GSにはザ・ワイルド・ワンズを上げるべきかもしれない。66年11月のデヴュー・ヒット「想い出の渚」から解散記念シングル「想い出の渚'71」71.8までの5年間、後発GSのデヴューも凋落も横目にブルー・コメッツ、ザ・スパイダースも凌ぐほど人気グループの地位を保ち続けた。メンバーは加瀬邦彦(リーダー、リード・ギター)、鳥塚繁樹(ギター)、島英二(ベース)、植田芳暁(ドラムス)の不動の4人(「(ブルー・ジーンズ時代の教訓で)気の合うメンバーを集めた」加瀬談)、リーダー以外の全員がリード・ヴォーカルをとる。

大物バンドでは珍しく一時的再結成も気さくにこなし(近年も地方局の健康食品の宣伝番組にまでメンバー全員で出演していた)、80年代には植田はハンド・マイクだったが現在では往年通りドラムスを叩きながらリード・ヴォーカルをとるスタイルに戻った。加瀬のエレキ12弦ギターもライヴでは轟音をあげる。オリジナル全曲を作曲する才能の他に、68年1月からは16歳の渡辺茂樹(オルガン)を加入させより低年齢層のファンも獲得、シングルもアルバムも粗製乱造を避ける、など加瀬のリーダーとしての手腕は大きい。掲載アルバムは、
○「ザ・ワイルド・ワンズ・アルバム」1967.6(画像1)
○「ザ・ワイルド・ワンズ・アルバム第2集」1968.2(画像2)
○「リサイタル'68」1968.12(画像3)

で、第一作は「想い出の渚」収録の他まるで「昨日よりも若く」の頃のバーズ、「リヴォルヴァー」の頃のビートルズのような「ジャスト・ワン・モア・タイム」「オール・オブ・マイ・ライフ」(テープの逆回転使用)など新鮮なフォーク・ロックのオリジナル12曲を収める。英語詞の曲など英米ロックのカヴァーと見まがう洋楽性がある。
第二作はA面をオリジナル、B面をカヴァーというGS標準仕様で、カヴァーではワンズのイメージ通り「花のサンフランシスコ」「夢のカリフォルニア」等を取り上げているが、加瀬のオリジナル曲の方がいいに決っている。GS屈指の名曲「青空のある限り」「愛するアニタ」の2連発で始まるA面の6曲でこのアルバムは前作を越える。

渡辺茂樹加入後の第三作「バラの恋人」を挟んだ初のライヴ盤「リサイタル'68」は意外に骨太で躍動的な演奏。やはりワンズもロックだったと判る。