人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

LP時代のアルバム曲数について

「アルバム1枚で28分なんて短すぎませんか?ミニアルバムならともかく、普通のアルバムでそんなに短いと買う側も損をしたような気がするんじゃありませんか?」とのお尋ねですが、もっともなご意見です。確かにビーチ・ボーイズキンクスの60年代のアルバム(ビーチ・ボーイズは70~80年代でも)は30分もありません。高校生の頃勉強中のBGM用にカセットテープに落としたら60分テープの片面にアルバム1枚まるまる収まったのには驚愕しました。LPで聴いている時には気がつかなかったことでした。短さや不足感はまったく感じず、アルバム1枚ごとの充実感は素晴らしかったからです。
LP時代のアメリカ盤のアルバム曲数は12曲までに制限されていました。ビートルズストーンズも本国イギリス盤で14曲が標準でしたが、アメリカ盤では2曲カット。これは時間的制約ではなく、1曲ごとの著作権料がアメリカでは高かったのです(著作権協会へのマージンのため)。クラシックは公共著作権だし、ジャズも曲数が少ないからLPレコードの限界(60分)まで入れる例もありましたが、あまり長いと音溝が狭くなり、音質・音量が落ちるので40分前後が標準になりました。
ポップスやロックは新曲が多いから著作権料が高く、60年代半ばまでは曲が短いので(ラヴィン・スプーンフルなども12曲で28分です)どのバンドのアルバムも30分そこそこでした。例外的にストーンズの「アフターマス」イギリス盤が14曲53分で、ストーンズは70年代も50分を越えるアルバム制作を続けます。ボブ・ディランも同様。曲が長いからです。
ところが66年から67年にかけて戦後のベビーブーム生まれが青年層になり、レコード売り上げが一気に倍増して、シングルばかりでなくアルバムのミリオンセラーも出てくるようになった。収益も上がる。そこで12曲という制限も30分前後というサイズもようやく自由になりました。CDはカラヤン指揮ベートーベン交響曲9番を基準に78分に開発されました。
60年代バンドのCDは、ビッグネーム以外はだいたい2in1かボーナス・トラックつきで70分台の容量なので、見方によっては豪華です。ビーチ・ボーイズのアルバム28作がCD14枚で手に入るのですから(輸入盤では。日本ではビーチ・ボーイズの版権が高い-ビートルズ以上-らしく、アルバム単体ごとの発売です)。