人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

(序a)モダン・ジャズの巨人25

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筆者はアマチュアながらジャズ演奏家だった。ロック・バンドなら高校時代からやっていたが(ギタリストだった)、社会人になってから同僚が卓上ラジカセでかけたエリック・ドルフィー「ラスト・デイト」1964には冒頭のフリー・ブロウ~スネア1発で衝撃を受けた。どんなロックより凄いと思った。
まだCDプレーヤーは持っていなかったので中古LPを買った。当時はジャズの分類は楽器別で、初心者には演奏楽器がわからないから、ちゃんとコーナーのある大物でなければたどり着けなかったところだ。スタン・ゲッツボサ・ノヴァ・アルバム以来初めてのジャズのLPだ。

ありがたいことに、別の同僚もジャズのLPをくれた。結婚したお姉さんのご主人からもらったがLPプレーヤーがないから聴けない。カセット・テープに落とすのを見返りにもらった10枚ほどのアルバムは、チャールズ・ミンガスソニー・スティットジョン・コルトレーンウェス・モンゴメリーソニー・ロリンズらの名作ぞろいだった。そして解説文を読んで、モダン・ジャズの名作はほとんど臨時メンバーを召集して3時間ずつ2回のスタジオ1発録りでアルバム1~2枚分を制作してしまう(レギュラー・バンドの場合は4枚、という例もある)。ギャラは買い取りでリーダーに50パーセント、後のメンバーは頭割りが慣例。薄利多売だから生涯に100~200枚のアルバムは珍しくなく、印税などほとんど入らないから年間300日以上の巡業で、ストレスと過労で精神疾患覚醒剤依存になる例も多く、平均寿命は40歳前後、と知った。
これはかなわないな、と思った。ジャズだって商業音楽には違いないが、ロックとは命の削り方が違う。ジミやジャニスはジャズマン的な死と言える。だがジャズマンは才能すらすり減り尽くして過労死していくのだ。

筆者が聴き始めた時には油井正一「ジャズ~ベスト・レコード・コレクション」(画像2・新潮文庫1986)がベストセラーで、今でも使える。もう一冊の「モダン・ジャズ名盤500」(画像1・音楽之友社1993)が出た頃には筆者はアルト・サックスを始めてバンドを組みジャズ・クラブ出演したり、ジャムセッションに出たりしていた。この本の目玉は討論「不滅の名盤50」と「モダン・ジャズの巨人25とその名盤」で、前者は大半が後者に含まれるから、次回から一人ずつご紹介していきたい。