人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

(35b)ポール・チェンバース(b)

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 チャールズ・ミンガスのような作曲・編曲・バンドリーダーでもない限りベーシストのリーダー作はなかなか実現しないものだ。そしてジャズマンの評価はリーダー作で決まると言ってよく、これまで取り上げてきた楽器別で見ても、
○トランペット・7人
トロンボーン・1人
○アルトサックス・6人
○テナーサックス・7人
○ギター・1人
○ピアノ・8人
○ベース・1人
○ドラムス・2人

 となっている。これではギターが少ないが、ジャズ・ギターはジャズ・ギターというジャンルに収まりがちで不利。ドラムスはジャズでは戦前から花方楽器でリーダーもOKという伝統がある。だがベースとなると、楽器の性格上縁の下の力持ち、だがジャズはベースとドラムスが良ければあとのメンバーは多少凡庸でも平均点はクリアする。逆にフロントが優秀でもベースとドラムスが良くなければ音楽全体が駄目になる。
 ドラムスに較べてベースの良し悪しはなかなかわかりづらい。そこで「良いベース」の見本といえば満場一致でポール・チェンバースになるだろう。ほとんど毎日クラブ出演しながら実働10年で150枚以上のアルバムに起用されているのだ。リーダー作も6枚ある。

 第一作は「チェンバース・ミュージック」56.5(画像1)で何とデビューから8か月。マイナー・レーベルのジャズ・ウェストとは言えまだ21歳のベーシストのアルバムとは、マイルスのご紋の大きさがわかる。メンバーはケニー・ドリュー(ピアノ)にマイルス・クインテット仲間のコルトレーンとフィリー・ジョーで、ワン・ホーンでコルトレーンものびやか、ドリューも好演の佳作。
 これで認められたか、第二作「ウィムス・オブ・チェンバース」56.9(画像2)、第三作「ポール・チェンバースクインテット」57.5(画像3)は老舗ブルー・ノートから出る。「ウィムス~」はギター入りセクステットコルトレーンもフィリー・ジョーも控え目、ホレス・シルヴァーのピアノとチェンバース、フィリー・ジョーは相性いまいち。「クインテット」はエルヴィン・ジョーンズがドラムス、ピアノがトミー・フラナガンと名作「オーヴァーシーズ」57.8の主役二人のサポートで、1曲ピアノ・トリオがあるがフロントが一本調子なので、いっそ全編トリオだったら良かった。