(1)乾直惠は発想に無理がなく、表現も比較的平易な詩人です。これまで取り上げてきたどの詩人よりも平易、と言っていいでしょう。詩は不思議なもので、平易さがかえって理解を拒むこともあります。「肋骨と蝶」は三好達治「測量船」、丸山薫「帆・ランプ・鴎」と並ぶモダニズムの代表詩集で、当時は抒情詩ではなくアヴァンギャルド(芸術的前衛)作品として書かれたものです。これらの抒情詩的側面に着目し、実験性を和らげたのが立原道造ら「四季」の若手詩人たちでした。もっと鋭利だった「コギト」の伊東静雄らは抒情詩としての特性を追究しつつ難解極まりない作風に到達しました。周囲からなにも影響されなかったのが西脇順三郎と中原中也です。逆に当時の詩の状況を一手に反映してみせたのが金子光晴でしょう。
乾直惠も単独で存在した詩人ではありません。「肋骨と蝶」は日本のシュルレアリスムの代表的詩集です。どう読めるか、どう読むかは読者に委ねられていることです。
(2)こちらこそたいへん励ましをいただきありがとうございました。2012年度は入院もなく、毎日2記事ずつ更新を続けることができました。年間の訪問数は約21,900人、1日平均60人です。励ましあってこそ続けてこられたブログだと思っています。
(3)今年もお世話になりました。ぼくのところはコメントも少なく、タイトルだけ見て引き返す人も多いかな、とも思います。病気療養中というと作文が格好の時間つぶしなんですよ。先二週間分は書いてあります。携帯投稿の文字制限一千字まで書いているのは元ライターの職業病みたいなものです。ほぼ毎日来てくださる方が多いのはこのブログの場合、一種の病気見舞いなんじゃないかと思っています(本当に毎日午前0時更新か、という確認も)。ブログ始めてから病気も安定している(盲腸入院はありましたが)ことも考えると、いい自宅療法になっているのでしょう。主治医に奨められる由縁です。餅は餅屋、ですかね。
(4)「丁寧でわかりやすい」と言っていただけると筆者冥利につきます。ありがとうございます。これまでも市島三千雄、千田光の全詩集、高橋新吉「戯言集」全編などを紹介してきました。詩・音楽(映画)・日記(回想)が大体このブログの三本柱です。大人になって学生時代の復習をしているような感じもありますが。