人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

(補4d)ビル・エヴァンス(p)

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Bill Evans(1929-1980,piano)。
「ポートレイト・イン・ジャズ」をラファロ&モチアンとのレギュラー・トリオ第1作とすると、第2作、
Explorations(画像1)61.2.2
-までは14か月の間が開いている。エヴァンスは専門家には高い評価を得たが、一般の人気やレコード売上げはデビューから5年経ったこの時点でも十分な成功をおさめていなかった。エヴァンスはこれまでもアルバムにマイルスゆかりの曲を入れていたが(デビュー作でも'Conception'を演っている)、今回はアルバム巻頭曲をマイルスの'Nardis'で決める。トリオの演奏は前作よりもさらに研ぎ澄まされており、ラファロの事故死で短命に終ったこのトリオのもっとも鋭利でテンションの高い作品になっている。

それでもまだエヴァンスは自分のトリオよりも、セッション活動を優先せざるを得ない境遇だった。サックス奏者で気鋭の作・編曲家の名作、
Oliver Nelson:Blues And Abstract Truth(画像2)61.2.23
-は当時の新鋭ジャズマンが一堂に会した素晴らしいアルバムだが、抜群の存在感で場をさらうエリック・ドルフィー(アルトサックス)のソロのバックではエヴァンスはまったく弾けなくなってしまう。エヴァンスの参加だけが瑕瑾だったセッションという情けないことになったが、案外不器用なところもある人なのだ(相手が悪かった)。アルバムはモダン・ジャズでも必聴の部類に入るもので、手も足も出なかったとはいえバドやモンクの失敗作のようにセッションを台無しにはしていない。

そして運命のライヴ録音がやってくる。
Sunday At The Village Vanguard(画像3)61.6.25
-がそれで、続編「ワルツ・フォー・デビー」(次回掲載)とともに絶頂期のトリオを捉えており、この録音の10日後にラファロは街路樹に車を大破させて夭逝する。まだ25歳だった。エヴァンス・トリオのライヴ盤、オーネット・コールマン・カルテットへの参加作品、「ジャズ・アブストラクションズ」などはすべてラファロの没後発表になった。ラファロの急死で活動意欲を失ったエヴァンスはホームレス一歩手前の自堕落な生活に転落する。ライヴ盤は続編とも次回で解説する。