人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

(補8e)セシル・テイラー(p)

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Cecil Taylor(1929-,piano)。
テイラーは常に商業的成功をおさめた(あるいは商業的に有望な)アーティストには批判的で、この時期にはビル・エヴァンスを敵視して音楽性やメンバーの力量をこきおろしていた。エヴァンスがテイラーの評価に追いつき、さらに商業的な可能性はテイラーより高かったからだろう。エヴァンスのスタンダード中心主義を嘲り、評判を呼んだスコット・ラファロ(ベース)の力量にもケチをつけた。マイルスについては一貫して批判し続けた。70年代初頭にはキース・エマーソンまで批判したが、何もEL&Pまで相手にしなくてもいいではないかと思う。

テイラーがついに音楽的な絶頂に達したのは、
Nefertiti,The Beautiful One Has Come(画像1)62.11.23
-で、続編の、
At The Cafe Monmartre(画像2)62.11.23
-とコペンハーゲンの有名ジャズ・クラブで同日録音されたもの。ビル・エヴァンスでいえば「サンディ・アット・ザ・ヴィレッジ・ヴァンガード」「ワルツ・フォー・デビー」に当たるものだ。
テイラー自身のピアノ・スタイルは「セシル・テイラーの世界」で完成を見た。当時のメンバーも優秀だったが、ユニット全体のサウンドはビ・バップ以来のリズム・フィギュアの発想を踏襲していた。サニー・マレーのパルス・ドラミングは従来のフォー・ビートを覆し、テイラーのポリトーナルなピアノと生み出すポリリズムに乗って意外なほど正統的なチャーリー・パーカー直系のライオンズのアルトが泳ぎまわる。唯一のスタンダード'What's New'、明確なリフを持つ'Lena'など比較的構造の捉えやすい曲から入ればこの白熱したユニットの音楽性を楽しみやすいだろう。一枚だけテイラーを選ぶならこのライヴ(二枚組版もある)がいい。この作品だけでもテイラーは巨匠として残る。

帰国したテイラーの次作は4年後になった。
Unit Structures(画像3)66.5.19
-がそれで、3管+2ベースのセプテット。マレーはアイラーの下に移り、後任は凄まじいテクニシャンのアンドリュー・シリル。ライオンズの86年の死去までユニットの基本メンバーはシリルとライオンズが不動になる。紙幅がないので次回でも解説する。