人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

(補10e)アンドリュー・ヒル(p)

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Andrew Hill(1931-2007,piano)。
ハッチャーソン(ヴィブラフォン)の第1リーダー作「ダイアローグ」についてはエリック・ドルフィーの'Out To Lunch'63.2に触れないわけにはいかない。ドルフィーは同年6月に急逝するが、このアルバムはブルーノート新主流派の指標となり、ハッチャーソン、ハバード、デイヴィス、ウィリアムズら参加メンバー全員の音楽性に転機をもたらした。「ダイアローグ」はヒル4曲、チェンバース2曲でハッチャーソンは名義上のリーダーという格好なのだが、次作以降で発表される楽曲から見るとこの人自身の作風はポップス的で、あえて第1作ではヒルたちのアグレッシヴな楽曲に挑んだとも思える。レーベル側の意向もあったかもしれない。

Compultion(画像1)65.10.8
-は発売即廃盤になった名作。ハバードとギルモアの2管にパーカッション2名を加えたセプテットで、「スモーク・スタック」の頃の作風を大胆に拡大しリズムを強化するとこうなる。14分のタイトル曲をはじめ全4曲で、コルトレーンの'Ku lu Se Mama'や'Om'など同時期のアフリカ路線に近いが、もっと陰鬱な雰囲気なのがヒルらしい。

次作、
Change(画像2)66.3.7
-はレコード番号まで決りながら没にされ、76年にサム・リヴァースの没作品と抱きあわせで発掘発売。単独アルバムとしてCD化されたのは2007年だった。今回はリヴァースとのワンホーン・カルテットで、ベースはウォルター・ブッカー、ドラムスはニューヨーク・コンテンポラリー・ファイヴやドルフィーのサイドマン出身のJ.C.モーゼス。
前作も凶暴だったが今回は輪をかけて凶暴。はっきりとセシル・テイラーを意識したフリー・ジャズ作品になっている。リヴァースもすごいがモーゼスが圧倒的なプレイで認識を改める存在感。ブッカーの異様なソロの背後でヒルチェンバロを掻き回す展開もぞくぞくする。ピアノ・トリオの'Pain'はニコルス的,'Lust'はエヴァンス風。

そして「コンパルション」発売から3年のブランクがあり、久々の新作は、
Grass Roots(画像3)68.8.5(&68.4.19)
-で、ヒル作品で初のジャズ・ロック路線になった。次回で触れる。