人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

二十世紀の十大小説(2)

 前回はサマセット・モーム編「世界の十大小説」の紹介で終ってしまった。煩を厭わず再掲載すると、モームのベスト10はこうなる。

フィールディング「トム・ジョウンズ」英1749
オースティン「高慢と偏見」英1813
スタンダール赤と黒」仏1830
バルザックゴリオ爺さん」仏1835
ディケンズ「デヴィッド・コパフィールド」英1850
フローベールボヴァリー夫人」仏1856
メルヴィル「白鯨」米1851
エミリー・ブロンテ嵐が丘」英1847
ドストエフスキーカラマーゾフの兄弟」露1879
トルストイ戦争と平和」露1869

 -と、昔の世界文学全集なら外せないラインナップだろう。一方、篠田一士「二十世紀の十大小説」は、こうなる。

プルースト失われた時を求めて」仏1913-27
ボルヘス「伝奇集」アルゼンチン1941,44
カフカ「城」チェコ1924,26
茅盾「子夜」中1933
ドス・パソス「U.S.A.」1938(30,32,36)
フォークナー「アブサロム、アブサロム!」米1936
ガルシア=マルケス百年の孤独」コロンビア1967
ジョイスユリシーズアイルランド1922
ムジール「特性のない男」オーストリア1931,33,43
島崎藤村「夜明け前」日1932,35

 -と、こういっては何だがほとんど読者がいないだろう。例えばボルヘス、茅盾、ドス・パソスマルケス、藤村は外し、ヴァージニア・ウルフ「波」英1930とフィッツジェラルド夜はやさし」米1934、マルカム・ラウリー「火山の下」英1947とデーブリーンベルリン・アレクサンダー広場」独1929、エルンスト・ユンガー「大理石の崖の上で」独1939にするという手もある。次点はフランスから、セリーヌの「なしくずしの死」1936か、ジュネ「花のノートルダム」1944、クロード・シモン「フランドルへの道」1960。アメリカからバロウズ裸のランチ」1959かピンチョン「V.」1963、または、ベールイ「ペテルブルグ」露1916やズヴェーヴォ「ゼーノの苦悶」伊1923でもいい。これらも二十世紀小説ベストテン入りする風格がある。
 次回はこの新旧ベストテンにコメントを加えるかたちで、どのように小説は発達してきたかを検討してみたい。