読書感想文・その他文学
ギイ・ド・モーパッサン(1850~1893)の作家活動は実質10年間という短いものでした。20代で役人生活のかたわら伯父の親友で母の知り合いでもあったギュスターヴ・フローベール(1820~1880)の薫陶を受け、エミール・ゾラ(1840~1902)らフローベールの弟子たち…
(金子光晴明治28年=1895年生~昭和50年=1975年没>) 金子光晴詩集『鮫』人民社・昭和12年8月=1937年刊 おっとせい 金子光晴 一 そのいきの臭えこと。 口からむんと蒸れる、 そのせなかがぬれて、はか穴のふちのやうにぬらぬらしていること。 虚無をおぼえる…
(室生犀星明治22年=1889年生~昭和37年=1962年没>) 舌 室生犀星 みづうみなぞ眼にはいらない、 景色は耳の上に つぶれゆがんでゐる、 舌といふものは おさかなみたいね、 好きなやうに泳ぐわね。(「婦人公論」昭和30年=1955年5月号、エッセイ集『続女ひと』…
『新體梅花詩集』明治24年(1891年)3月10日・博文館刊。 四六判・序文22頁、目次4頁、本文104頁、跋2頁。(ダストジャケット・本体表紙) 日本の現代詩の起点は北村透谷(明治元年=1868年生~明治27年=1894年)5月16日縊死自殺・享年25歳)の存在が真っ先に上げ…
(氷見敦子) 『氷見敦子全集』思潮社・平成3年=1991年10月6日刊 消滅してゆくからだ 氷見敦子 眠りについた男の腕のなかから 昨日よりもさらに深い夢の奥へ入っていく その女のからだが水の通路になっていて 水音が聞こえる、どこかで 水道の蛇口が大きく開…
*町 医 祝 算之助 夜とともに、町医者はやつてきた。家来をつれて。その家来は、たぶん同じ猟ずきな仲間ででもあろう。 ちいさな部屋のなかは、黄いろい絵具が、べたべたちらかっている。私はどのようにも、片ずけきれないのだ。 そのまんなかに、金魚(きん…
(明治44年=1911年・28歳の高村光太郎) 詩集 道程 (抒情詩社・大正3年10月25日刊) 「道 程」 高 村 光 太 郎 僕の前に道はない 僕の後ろに道は出来る ああ、自然よ 父よ 僕を一人立ちにした広大な父よ 僕から目を離さないで守る事をせよ 常に父の気魄を僕に…
(岩手移住時代の高村光太郎) 母をおもふ 高村光太郎 夜中に目をさましてかじりついた あのむつとするふところの中のお乳。「阿父(おとう)さんと阿母(おかあ)さんとどつちが好き」と 夕暮の背中の上でよくきかれたあの路次口。鑿(のみ)で怪我をしたおれのうし…
[ 小野十三郎(1903-1996)近影、創元社『全詩集大成・現代日本詩人全集10』昭和29年('54年)12月刊より ] 詩集『拒絶の木』思潮社・昭和49年(1974年)5月1日刊 昭和50年(1975年)2月・読売文学賞受賞 『小野十三郎著作集』第二巻・筑摩書房(平成2年=1990年12月…
ゴッドフリート・ベン詩集『死体検死所(モルグ)とその他の詩』Morgue und andere Gedichte (上から1924年再版・1912年3月初版本・2017年最新普及版) 死体検死所(モルグ)・I~V I・小さなえぞぎく(アスター) 溺死したビールの運送屋の男が解剖机に持ち上げら…
詩集『豊饒の女神』思潮社・昭和37年8月1日刊 慶應大学退官後の西脇順三郎(「別れの花瓶に/追放人のエジプト人の頭がうつる/この長頭形の白雲の悲しみ」) ヤフーブログ最終更新日は西脇順三郎(1894-1982)の68歳時の名詩で締めることにします。西脇はイギリス…
アメリカのSF作家シリル・M・コーンブルース(1923-1958)に、ギャング(マフィア)組織(Syndicate)が国家を統治するパラレルワールドの現代(20世紀中葉)アメリカを描いた風刺ユートピアSF長編『シンディック(The Syndic)』'53(翻訳・サンリオSF文庫)という尖鋭…
[ 荒川洋治(1949-)『荒川洋治全詩集』刊行時 ] [『荒川洋治全詩集 1971-2000』思潮社・平成13年=2001年6月刊 ] ヤフーブログ毎日更新最後の現代詩は現代詩も現代詩、現役現代詩人で締めましょう。荒川洋治(1949-)は福井県生まれの詩人。12歳から地方新聞や…
[ 山村暮鳥遺稿詩集『雲』大正14年(1925年)1月・イデア書院刊 ] [ 晩年の山村暮鳥(1884.1.10-1924.12.8) ] 藤の花 ながながと藤の花が 深い空からぶらさがつてゐる あんまり腹がへつてゐるので わらふこともできないで それを下から見あげてゐる ゆらりとし…
[ 山村暮鳥遺稿詩集『雲』大正14年(1925年)1月・イデア書院刊 ] [ 晩年の山村暮鳥(1884.1.10-1924.12.8) ] 病牀の詩 朝である 一つ一つの水玉が 葉末葉末にひかつてゐる こころをこめて ああ、勿体なし そのひとつびとつよ おなじく よくよくみると その瞳(…
[ 山村暮鳥遺稿詩集『雲』大正14年(1925年)1月・イデア書院刊 ] [ 晩年の山村暮鳥(1884.1.10-1924.12.8) ] 雲 山村暮鳥 序 人生の大きな峠を、また一つ自分はうしろにした。十年一昔だといふ。すると自分の生れたことはもうむかしの、むかしの、むかしの、そ…
(19世紀末のドイツ版グリム童話本挿絵より) 前回に引用した節で、谷川雁のグリム童話『おおかみと七ひきの小やぎ』についての考察エッセイ「時間の城にかくれた小やぎ」はほぼ結論までを語っています。あとに続く後段の段落は補足のようなものですが、このエ…
(19世紀末のドイツ版グリム童話本挿絵より) これは'60年代までの政治活動家から'70年代以降には児童教育家に転じた詩人の谷川雁(1923-1995)が、昭和55年('80年)頃から主催していた「ものがたり文化の会」での討論をまとめたエッセイ集『ものがたり考』(『意…
[ 小野十三郎(1903-1996)、40代前半頃。] 『小野十三郎著作集』全三巻 平成2年(1990年)9月・12月・平成3年2月・筑摩書房刊、第一巻所収 小野十三郎第4詩集『詩集大阪』 昭和14年(1939年)4月16日発行 定価1円 四六判 87頁 角背フランス装 装幀・菊岡久利 城 …
[ 小野十三郎(1903-1996)、40代前半頃。] 『小野十三郎著作集』全三巻 平成2年(1990年)9月・12月・平成3年2月・筑摩書房刊、第一巻所収 小野十三郎第4詩集『詩集大阪』 昭和14年(1939年)4月16日発行 定価1円 四六判 87頁 角背フランス装 装幀・菊岡久利 一 …
[ 小野十三郎(1903-1996)、40代前半頃。] 『小野十三郎著作集』全三巻 平成2年(1990年)9月・12月・平成3年2月・筑摩書房刊、第一巻所収 小野十三郎第4詩集『詩集大阪』 昭和14年(1939年)4月16日発行 定価1円 四六判 87頁 角背フランス装 装幀・菊岡久利 古 …
[ 小野十三郎(1903-1996)、40代前半頃。] 『小野十三郎著作集』全三巻 平成2年(1990年)9月・12月・平成3年2月・筑摩書房刊、第一巻所収 小野十三郎第4詩集『詩集大阪』 昭和14年(1939年)4月16日発行 定価1円 四六判 87頁 角背フランス装 装幀・菊岡久利 北 …
[ 小野十三郎(1903-1996)、40代前半頃。] 『小野十三郎著作集』全三巻 平成2年(1990年)9月・12月・平成3年2月・筑摩書房刊、第一巻所収 小野十三郎第4詩集『詩集大阪』 昭和14年(1939年)4月16日発行 定価1円 四六判 87頁 角背フランス装 装幀・菊岡久利 白 …
[ 小野十三郎(1903-1996)、40代前半頃。] 『小野十三郎著作集』全三巻 平成2年(1990年)9月・12月・平成3年2月・筑摩書房刊、第一巻所収 小野十三郎第4詩集『詩集大阪』 昭和14年(1939年)4月16日発行 定価1円 四六判 87頁 角背フランス装 装幀・菊岡久利 冬 …
[ 小野十三郎(1903-1996)、40代前半頃。] 『小野十三郎著作集』全三巻 平成2年(1990年)9月・12月・平成3年2月・筑摩書房刊、第一巻所収 小野十三郎第4詩集『詩集大阪』 昭和14年(1939年)4月16日発行 定価1円 四六判 87頁 角背フランス装 装幀・菊岡久利 早 …
[ 小野十三郎(1903-1996)、40代前半頃。] 第3詩集『古き世界の上に』 昭和9年(1934年)4月15日・解放文化聨盟出版部(植村諦聞)刊 『小野十三郎著作集』全三巻 平成2年(1990年)9月・12月・平成3年2月・筑摩書房刊、第一巻所収 い た る と こ ろ の 訣 別 俺は…
[ 小野十三郎(1903-1996)、40代前半頃。] 第3詩集『古き世界の上に』 昭和9年(1934年)4月15日・解放文化聨盟出版部(植村諦聞)刊 『小野十三郎著作集』全三巻 平成2年(1990年)9月・12月・平成3年2月・筑摩書房刊、第一巻所収 留 守 ひさしぶりにたずねていつ…
[ 小野十三郎(1903-1996)、40代前半頃。] 第3詩集『古き世界の上に』 昭和9年(1934年)4月15日・解放文化聨盟出版部(植村諦聞)刊 『小野十三郎著作集』全三巻 平成2年(1990年)9月・12月・平成3年2月・筑摩書房刊、第一巻所収 軍 用 道 路 暗い郊外の野をつら…
[ 小野十三郎(1903-1996)、大正15年=1926年、第1詩集『半分開いた窓』刊行の頃、23歳。] 第1詩集『半分開いた窓』(私家版) 大正15年(1926年)11月3日・太平洋詩人協会刊 嵐 の 歌 小野十三郎 銛をうたれた鯨のやうに 真黒な雲が空を荒れ狂ふ グリリと出歯包…
[ 小野十三郎(1903-1996)、大正15年=1926年、第1詩集『半分開いた窓』刊行の頃、23歳。] 第1詩集『半分開いた窓』(私家版) 大正15年(1926年)11月3日・太平洋詩人協会刊 ロ マ ン チ シ ズ ム に 僕は頭脳の中で 非常に無性格な一つの風景を想起する そこに…