#その他文学
19世紀アメリカの夭逝作家スティーヴン・クレイン(Stephen Crane、1871~1899、享年28歳)の処女作にして第1長篇『街の女マギー (Maggie:A Girl of the Streets)』について引き続き読んでいく際に、再び作品の成立背景とあらすじを記しておきましょう。『街の…
19世紀アメリカの夭逝作家スティーヴン・クレイン(Stephen Crane、1871~1899、享年28歳)は、同世代のフランク・ノリス(1870~1902、出世作『マクティーグ(『死の谷』『グリード』)』1899年)、セオドア・ドライサー(1871~1945、処女作『シスター・キャリー(…
今回も軽い話題でいきます。このブログはもともと12年ほど前に、当時あったヤフーブログで始めて、ヤフーブログの廃止でこちらのブログに移ってきたのですが、ヤフーブログを始めた当初に簡単なコラムにしたら大きな反響があり、書いて載せた筆者の方が面喰…
今回も軽い話題でいきます。このブログはもともと12年ほど前に、当時あったヤフーブログで始めて、ヤフーブログの廃止でこちらのブログに移ってきたのですが、ヤフーブログを始めた当初に簡単なコラムにしたら大きな反響があり、書いて載せた筆者の方が面喰…
◎安野希世野「ちいさなひとつぶ」(TVアニメ『異世界食堂』エンディング・テーマ) MV (アルバム『涙』Flying Dog, 2017) : https://youtu.be/eJ5eOMUmcEY ◎安野希世野「ちいさなひとつぶ」Full Size (Flying Dog, 2017) : https://youtu.be/IHmyGSilVXE * 石…
(蒲原有明明治8年=1875年生~昭和27年=1952年没>) 智慧の相者は我を見て 智慧(ちゑ)の相者(さうじや)は我を見て今日(けふ)し語(かた)らく、 汝(な)が眉目(まみ)ぞこは兆(さが)惡(あ)しく日曇(ひなぐも)る、 心弱くも人を戀ふおもひの空の 雲、疾風(はやち)…
蒲原有明・明治9年(1876年)生~昭和27年(1952年)没 日のおちぼ 日の落穗(おちぼ)、月のしたたり、 殘りたる、誰(たれ)か味ひ、 こぼれたる、誰かひろひし、 かくて世は過ぎてもゆくか。 あなあはれ、日の階段(きざはし)を、 月の宮――にほひの奧を、 かくて將…
蒲原有明・明治9年(1876年)生~昭和27年(1952年)没 あだならまし 道なき低き林のながきかげに 君さまよひの歌こそなほ響かめ、―― 歌ふは胸の火高く燃ゆるがため、 迷ふは世の途みち倦みて行くによるか。 星影夜天(やてん)の宿(しゆく)にかがやけども 時劫(じ…
蒲原有明・明治9年(1876年)生~昭和27年(1952年)没 牡蠣の殼 牡蠣(かき)の殼(から)なる牡蠣の身の かくもはてなき海にして 獨(ひと)りあやふく限ある そのおもひこそ悲しけれ 身はこれ盲目(めしひ)すべもなく 巖(いはほ)のかげにねむれども ねざむるままにお…
与謝野鉄幹・明治6年(1873年)2月26日生~ 昭和10年(1935年)3月26日没(享年62歳) 煙草 啄木が男の赤ん坊を亡くした、 お産があつて二十一日目に亡くした。 僕が車に乗つて駆けつけた時は、 あの夫婦が間借してゐる喜之床の前から、 もう葬列が動かうとしてゐ…
与謝野鉄幹・明治6年(1873年)2月26日生~ 昭和10年(1935年)3月26日没(享年62歳) 人を戀ふる歌 (三十年八月京城に於て作る) 妻をめどらば才たけて 顔うるはしくなさけある 友をえらばば書を讀んで 六分の俠氣四分の熱 戀のいのちをたづぬれば 名を惜むかなを…
入沢康夫・昭和6年(1931年)11月3日生~ 平成30年(2018年)10月15日没(享年86歳) 哀切なるプロローグ ――またしても回り来った年のはじめに―― 入沢康翁 この国では、詩は、今日完全に侮辱されている。 この国では、詩は、今日完全に侮辱されている。 この国では…
与謝野鉄幹・明治6年(1873年)2月26日生~ 昭和10年(1935年)3月26日没(享年62歳) 誠之助の死 大石誠之助は死にました。 いゝ気味な、 機械に挟まれて死にました。 人の名前に誠之助は沢山ある、 然し、然し、わたしの友達の誠之助は唯一人。 わたしはもうその…
与謝野晶子・明治11年(1878年)12月7日生~ 昭和17年(1942年)5月29日没(享年64歳) 君死にたまふことなかれ 旅順口攻囲軍の中に在る弟を歎きてあゝをとうとよ、君を泣く、 君死にたまふことなかれ。 末(すゑ)に生れし君なれば 親のなさけはまさりしも、 親は刄…
薄田泣菫・明治10年(1877年)5月19日生~ 昭和20年(1945年)10月4日没(享年68歳) 破甕の賦 火の氣絶えたる廚(くりや)に、 古き甕(かめ)は碎けたり。 人の告ぐる肌寒(はださむ)を 甕の身にも感ずるや。 古き甕は碎けたり、 また顏圓(まろ)き童女(どうによ)の 白…
中原中也・明治40年(1907年)4月29日生~ 昭和12年(1937年)10月22日没(享年30歳) 無題 I こひ人よ、おまへがやさしくしてくれるのに、 私は強情だ。ゆうべもおまへと別れてのち、 酒をのみ、弱い人に毒づいた。今朝 目が覚めて、おまへのやさしさを思ひ出しな…
島崎藤村・明治5年(1872年)3月25日生~ 昭和18年(1943年)8月22日没(享年72歳) 『若菜集』明治30年(1897年)8月29日・春陽堂刊 髮を洗へば 髮を洗へば紫の 小草(をぐさ)のまへに色みえて 足をあぐれば花鳥(はなとり)の われに隨ふ風情(ふぜい)あり 目にながむ…
室生犀星・明治22年(1889年)8月1日生~ 昭和37年(1962年)3月26日没(享年72歳) 兇賊TICRIS氏 TICRISはふくめんを為す。 TICRISは思ひなやみ、 盗むことを念ず。 盗むことを念ずるとき光を感じ 心神を感ず。 ぴすとるを磨き、 天をいだき、 妹には熱き接吻を与…
高橋新吉・明治34年(1901年)1月28日生~昭和62年(1987年)6月5日没(享年86歳) 中也像 スペインの宮廷画家ヴエラスケスに 中原中也像がある 中也は白痴では決してなかつたが ヴエラスケスは 手の短い男が足を投げ出している無頼な姿を描いている 三百年以前に…
中原中也・明治40年(1907年)4月29日生~ 昭和12年(1937年)10月22日没(享年30歳) 含羞(はぢらひ) ――在りし日の歌―― なにゆゑに こゝろかくは羞(は)ぢらふ 秋 風白き日の山かげなりき 椎の枯葉の落窪に 幹々は いやにおとなび彳(た)ちゐたり 枝々の 拱(く)みあ…
川路柳虹・明治21年(1888年)7月9日生~昭和34年(1959年)4月17日没 暴風のあとの海岸其の他より 川路柳虹 「暴風のあとの海岸」 白――明るい海のにほひ、 濁つた雲の静かさ、白――灰――重苦しい痙攣…… 腹立たしいやうな、 掻き毟つたやうな空。藻――流木―― 磯草の…
川路柳虹・明治21年(1888年)7月9日生~昭和34年(1959年)4月17日没 新詩四章より 川路柳虹 「塵溜(はきだめ)」 隣の家の穀倉の裏手に 臭い塵溜(はきだめ)が蒸されたにほひ、 塵塚のうちにはこもる いろいろの芥(あくた)の臭み、 梅雨晴れの夕(ゆふべ)をながれ…
野口米次郎・明治8年(1875年)12月8日生~昭和22年(1947年)7月13日没 「私の歌」 野口米次郎私のは進歩を否定する歌、 形式では律せられない無言の歌……… 生命の生れ、 避けることの出来ない偶然、 創造的本能の上昇、 歌よ、汝は現象だ、仕遂げではない。 言…
野口米次郎・明治8年(1875年)12月8日生~昭和22年(1947年)7月13日没 「雨」 野口米次郎雨の唇に歌があるお聞きなさい、其れは空の歌を聞えるやうにしたのです、雨の唇に歌があるお聞きなさい、其れは地の歌を見えるやうにしたのです。 雨の歌は何を歌ひます…
土井晩翠・明治4年(1871年)生~昭和27年(1952年)没 「荒城の月」 土井晩翠明治卅一年頃東京音樂學校の需に應じて作れるもの、作曲者は今も惜まるる秀才瀧廉太郎君春高樓の花の宴 めぐる盃(さかづき)影さして 千代の松が枝わけ出でし むかしの光いまいづこ。…
蒲原有明・明治9年(1876年)生~昭和27年(1952年)没 「朝なり」 蒲原有明朝なり、やがて濁川(にごりかは) ぬるくにほひて、夜の胞(え)を ながすに似たり。しら壁に―― いちばの河岸(かし)の並み藏の―― 朝なり、濕める川の靄。川の面(も)すでに融けて、しろく、…
薄田泣菫・明治10年(1877年)生~昭和20年(1945年)没 「ああ大和にしあらましかば」 薄田泣菫ああ、大和にしあらましかば、 いま神無月(かみなづき)、 うは葉散ちり透(す)く神無備(かみなび)の森の小路(こみち)を、 あかつき露に髮ぬれて、徃(ゆ)きこそかよへ…
北原白秋・明治18年(1885年)1月25日生~昭和17年(1942年)11月2日没 「薔薇の木に」 北原白秋薔薇の木に 薔薇の花さく。なにごとの不思議なけれど。(詩集『白金之独楽』より)* 北原白秋(1885-1942)のこの短詩は、三日三晩で書かれたという短詩全95篇を収めた…
千家元麿(明治21年=1888年生~昭和23年=1948年没) わが児は歩む 千家元麿吾(わ)が児は歩む 大地の上に下ろされて 翅(はね)を切られた鳥のやうに 危く走り逃げて行く 道の向ふには 地球を包んだ空が蒼々として、 底知らず蒼々として日はその上に大波を蹴ち…
石原吉郎(大正6年=1915年11月11日生~昭和52年=1977年11月14日没) 位置 石原吉郎しずかな肩には 声だけがならぶのでない 声よりも近く 敵がならぶのだ 勇敢な男たちが目指す位置は その右でも おそらく そのひだりでもない 無防備の空がついに撓(たわ)み …