人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

#14.承前『エピストロフィー』

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前回で「モンクス・ミュージック」収録の『エピストロフィー』のトチり具合をホーキンス→モンク→ブレイキーとし、コルトレーンは正確な小節数から入っていると指摘したが、これはぼくのバンドのベースのKと真夜中に板橋の凸版印刷所の出張校正室で仕事しながら確認したから間違いない。夜中で徹夜だったから二人ともハイになっていて爆笑しながら聴き惚れたものだ。
実はこのトチり版『エピストロフィー』はジャズのガイドブックごとに異論があり、コルトレーンが出番を間違えてモンクが慌てて呼びかける、とか、ホーキンスもコルトレーンもトチるとか諸説ある。正しい順番は前回書いた通りで、ホーキンスがアドリブ中に小節数を見失いソロを早く切り上げてしまう、それにつられてモンクがコルトレーンに呼びかけ、ブレイキーもドラムロールしてしまうがコルトレーンは本来の小節数から吹き始めて混乱を収拾させる、という手順になる。

なぜフリーライターが出張校正の手伝いなどしていたかというと、Kもぼくも、元々は同じ会社の編集部にいて、大手との合併でKは新編集部の編集長になったがぼくは独立してフリーライターになった。-というか、ぶらぶらしていたぼくを、元同僚たちがライターに依頼してくれたのが経緯だった。ぼくは元編集部あがりだから仕事の手際がよく、レイアウトデザインもできたから企画からまるごと完パケまでできた。校正だってお手のものなので、Kは編集部の部下たちが全員徹夜続きだったので帰して、仕上げはぼくに手伝いを頼んできたのだ。
同僚だった頃からの友人だし、一緒にジャズのバンドまでやっている仲だから気軽にOKした。

「これ買ったんだ。聴こうよ」と、Kは「モンクス・ミュージック」を出張校正室備え付けのCDラジカセにかけ、「佐伯さんは持ってるよね。演奏ミスで有名らしいけど、どの曲?」
「『エピストロフィー』かな?でもどんな具合にミスしてるのかチェックしながら聴いたことはないな」
「じゃあチェックしながら聴こうよ。佐伯さんとおれだけなんだから堂々と聴けていいよね(笑)」

「いいね、このベース。どこを演ってるんだか全然わからない(笑)」
Kはベーシストだから、拍節はきちんと数えられる。ぼくはホーン奏者だから正確な拍節で演奏する訓練をしている。その結果、二人で出した結論が上記のものだ。ますますモンクが好きになった。