人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

アル中病棟の思い出18

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・3月10日(水)雨
「Mさんも本来アルコール科なのだが脚の怪我の回復待ちで第三病棟、Kくんは躁鬱病だから本来は第一病棟なのだが素行の問題(なかなか鎮静化しない)ので第三…だったはずだが午前中にMさん、Kくん、Smくん(34歳)と第三組がまとめて第二病棟に移室してくる。Smくんもアルコールではなく鬱病なのだが、第三は一般精神科(第一)とアルコール科(第二)の急性期の混合病棟なので常に満床の上、入院待機患者も多い。Kくんに関してはルームメイトに続いてMさんまで第二に移ると孤立してしまう、という配慮から奨められたらしい。Kくんは佐伯かMさんとの二人部屋にしてもらうのを条件に移ってきたという。彼はいったい何のために入院しているのか」

「彼は希望がかなった(また同室だ)のでノリノリで来たが、来るなり喫煙室でなんだよここの連中は、集団でなけりゃ何も出来ないやつらじゃないか、だいたい何でアル中でもないおれが、と早くも不満爆発。MさんはSmくんと二人部屋になる。貧乏くじを引かされた気分。KくんはSmくんと同郷だとわかると、やっぱ長州人じゃないとな、と機嫌を直す」

・3月11日(木)晴れ
「第三のNくん第一病棟に移るので送別に行く。Kくんの躁転がひどい。午後にYくん(33歳、統合失調症、入院二回目)第二に来る。将棋好き、ドヤに二年いたと屈託なく話す。火曜日に続いてまたバテて、昼食後から寝込み、起されたらもうみんな夕食後だった。また掃除も午後の学習も寝過ごしてしまった。体調を理由に大目に見てもらえるとはいえ、情けないことには違いない」

・3月12日(金)晴れ
「相変わらず眠れず疲れていたが、午後のレクリェーション(ピクニック)には参加する。第二の人たちと早く親しくしたいからだ。Fさんが枯葉の道に落ちている枝をいちいち拾って脇に投げていた。お年寄りが転ぶと危ないからだという。院内だけでは見えない面が見えて面白い。就寝前の喫煙室で、今日の学習で習った通り一回の入院で断酒は無理かなあ(注1)、と口にしたせいでFさんとKくんにさんざん説教される。Fさんには友人として言っているんだよ、と言われ、Kくんにはお前の隣に越すぞ、と言われる(注2)」

(注1)患者の九割以上は二年以内に再入院する。
(注2)Fさんは退院後一か月でアル中に戻り、Kくんは三か月で再入院した。