人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

アル中病棟の思い出27

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・3月17日(水)晴れ
(前回から続く)
「今日は午前も午後も学習プログラムがあったからか早目に寝つく人が多い。それと、KくんはKjさんやTgさんのようなおばあちゃんには優しく話を合わせてあげる意外な面があるのがわかった。あながち話を合わせているだけではなく、そうですよね、ひとりぼっちの家に帰るのは寂しいですよね、と素直に弱音(しかも本音)を洩らす。これが男、または若い女だとランクづけしたり軽蔑を顕にする(たとえばHA)のだが、おばあちゃんには高慢なプライドもエゴもなしに接していられる、というのもなんとなくわかる気がする」

・3月18日(木)晴れ
「噂に聞く第一病棟(一般精神科専門病棟)の奇人Tnくんをぜひ見物したかったが(注1)あいにく午前10時からD先生の診察。でも二番目に呼ばれて五分で済んだ。滑舌が悪いのは先週末から切り替えた睡眠導入剤せいらしい。経過良好と診断され、OT参加を申し入れると、願書提出の一昨日に許可してあるという。ただし第一病棟OTは先方の病棟の許可が必要(注2)。あまりにあっけなく終ったので、気をつけるようなことはありますか?と訊くとうーん、佐伯さんは素行に問題もないし…そうですね、女性の患者さんとはあまり親密にならないことですかね。はい。以前入院した病院でも煩わしい目にあったのでよくわかります。気をつけます(注3)」

「OTから帰った二人に何で来れなかったの?と訊かれてD先生の説明通りに答える。昼食後腰痛のKくんに頼まれ、ヤマザキコッペパンつぶあん&マーガリンをコンビニAに買いに行くが売り切れ、戻る前に中庭の喫煙所で一服していると初老の患者が話かけてくる」

「あの…今の世の中あまり良くないですよね。ええ。昔もあんまり良くなかったですよね。はい。これからもあまり良くなりそうにないですよね。そうですね。あー、と男は煙草をもみ消し、どうも失礼しました。いえ、おかまいなく」

(注1)OT(作業療法)でKくんやSmくんが一緒なので、もう一挙一動が予測不可能支離滅裂で大爆笑だという。再現不可能なほど、というから相当だろう。
(注2)Kくんたちは元々一般精神科患者だから問題ないが、アルコール科患者だと話は別になる。
(注3)入院中も退院後もこれまで以上のひどい目にあうとは思わなかった。