人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

アル中病棟入院記65

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・3月24日(水)雨
(前回から続く)
「全体会がお開きになり、雨降りの中散歩に行こうと言い出す人もいない。昼食後も1時から掃除とラジオ体操で、1時半からはTE院長の『酒害教室』(必修)があるからトイレに行ったり一服したりでほとんどのんびりしている暇はない。Skさんという、たぶん実年齢は60歳前後だが動作は歳より若々しい人が入ってくる(注1)。第三病棟から降りてきたのか第二直行入院かわからないのは、どうも勝手知ったる様子だからだ。Hsさんが退院した替りに同室になったFさんにそれとなく訊くと、13年ぶりの入院だそうだよ。カンが当ったわけだ。表面的には人当たりが好い、気さくな様子に見える、スキンヘッドのおじさんだ(注2)」

「酒害教室は一般精神科入院者も参加可だが普段は誰も出ない(アルコール科入院者は全員必修)。朝から雨でヒマを持て余したか、Kくんは一般科から唯一出席。院長講義となると興味が出たらしい。彼は向学心は無駄に強いのだ(取得資格37種というのが自慢。だから全然おそれいらない佐伯くんは逆に友情の対象になるらしい)。TEのおやじがどれだけの話するのか聞いてみたいぜ、もちろん質問してもいいんだよな?」

「ところがKくんの期待もむなしく、婦長が現れるとホワイトボードに縦書きで『アルコール依存症からの回復』と書いて(後で気づいたがホワイトボード講義で縦書きする人は珍しい。この後も全編縦書きで通していた)、今日は院長に急用があって私が替りを勤めます。やれやれ、Kくんそれなら退席してもよかろうに。内容は断酒三本柱(一日断酒、抗酒剤、自助グループ)の解説と特に自助グループの重要性、後半は薬物依存症、システム依存症と関係依存症(注3)の代表例の解説からHALT(Hungry,Angry,Lonely,Tired)に注意、と締める。わかりますよねKgさん?え、はい。彼女もリピーター(スリップアウト)ということか。婦長も言わでもがなのことをあてこする人だ」(続く)

(注1)この人が今後傍観者的トラブルメーカーになるとは最初は判らなかった。
(注2)何かと他人に嫌みを言っては周囲を不愉快な雰囲気にして喜ぶ質の悪い人だと判明するのに時間はかからなかった(そして非難されると凄む。最悪)。
(注3)自助グループもそうではないか?