これまで掲載したジョイ・ディヴィジョン記事は1998年の4枚組ボックス・セット「ハート・アンド・ソウル」(画像)の詳細な解説書と、グラント・ジー監督による詳細なバンドとイアン・カーティスのドキュメンタリー映画「ジョイ・ディヴィジョン」2007年に準拠した。
ジョイ・ディヴィジョンへの関心は、やはりイアン・カーティス自殺後の反響に始まって、老舗のロック専門店・新宿レコードで遺作アルバム「クローサー」と土屋昌美が古今シングルのベスト・テンに上げていた『ラヴ・ウィル・ティア・アス・アパート』を発売直後に購入している。そしてファースト・アルバム「アンノウン・プレジャー」を買い、81年秋に追悼発売された拾遺曲とライヴの2LP「スティル」を年末年始の郵便配達のアルバイトをはたいて海賊盤の「ワルシャワ&RCAデモテープ」とロベール・ブレッソンの映画「湖のランスロー」からのスチール写真を使ったジャケットのライヴ盤とまとめて買った。あのライヴ盤は盛大に演奏ミスがあるから公式発売の可能性はまずないが音質も良く、バンドの勢いもあり愛聴した。演奏に難があるなら公式盤「スティル」のラスト・ライヴのシンセサイザー使用曲はもっとひどい。『10年間』なんかほとんど半音ズレている。機材に問題があったのだろう。
おそらく世界初のジョイ・ディヴィジョン本(イタリア版)もすぐに買った。
そしてやっと未亡人による回想録と直筆全歌詞集の原書と訳書を入手した。画像参照。表紙も同じ(笑)。
やはりイアン・カーティスは突出した才能だったというより、一人の人間が背負うには重すぎる運命を背負ってしまった人だった気がする。
ゲイリー・ニューマンでもデイヴィッド・シルヴィアンでもフィル・オーキーでも同世代の素晴らしい才能は他にもいるし、モリッシーなどはデビューが遅かった分、才能の発露をコントロールできた。もしジャパンがファーストとセカンドだけ、ゲイリー・ニューマンもチューブウェイ・アーミーの二作だけ、ヒューマン・リーグも二作だけ、スミスも…という爆発的な活動だけでリーダーが自殺、という事態は考えられないが、ジョイ・ディヴィジョンはそうなった。たいがいの人がそういうタイプの人間にはならずにイアン・カーティスの享年より生き延びるものだから、ジョイ・ディヴィジョンの音楽は改めてそのような人生のあり方を理解したくなるような時に聴き返されるのかもしれない。