人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

アル中病棟入院記80

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・3月26日(金)曇り、にわか雨、にわか晴れ、曇り
(前回から続く)
「昨夜の追補から始めて朝食までの出来事を日記に書きかけたところでKくんがズボンをぶら下げてくる。穴を縫ってくれないか?できるけれど、下手だぜ。女の人に頼んだらどうだい?そんな恥ずかしいことできねえよ。佐伯くんだから頼めんだよ。マイメロディのお願いなら逆らえないがKくんの頼みは別の意味で断れない。いい歳こいた中年男が精神年齢は中学生並みというのはこの先もそうだろうが、憐れをそそるとしかいいようがない。おれが中学生の頃は、制服のボタンが取れると女の子が群がってきたぜ。いいなあ、モテる男は」

「そんなんじゃないよ。針と糸はナースステーションで借りてきたの?そう。Uzさんがそんな(Kくんはいつも上下黒のトレーナーですごしている。寝る時もだ)格好じゃダメだって言うからさ。そこで彼は折り目のついたズボン、ダンガリー・シャツ、薄手のセーターに黒のロングコートで行くことにしたのだが(これがおれの通勤着だぜ。彼にしては趣味は悪くない)ズボンの片膝の外側の縫い目がほつれて左右とも約3cmほどの穴が空いてしまっているのに気づいた。彼から受け取り、とりあえず裏返して3mm間隔くらいで縫ってみる。これでも靴屋の孫、洋裁師の息子、ライター以外にグラフィック・デザイナーも兼業していた器用貧乏の家系、よほど注意して見ないと補修の跡がわからない程度にはできあがる」

「お花見は八王子市の長池公園、題目は『フィールドワーク』、なぜまたここの病院は単にお花見、とか遠足、と呼ばないのだろう。『健脚組』は10時10分に病院玄関前に集合して点呼・出発(片道5kmだ)、ゆっくり組(バス組)は10時20分。最後部の四人掛けでMtさんの隣になったので、シートベルトを最長に伸ばさないとウェストを巻けずしかも自分では手が届かない彼女の手伝いをすることになる(注)。幸先良いスタートかとんだ災難かわからない。よくよく他人の世話を焼く運命らしい」(続く)

(注)Mtさんは入院中ますます太ってしまい、ついにトイレでお尻が拭けなくなり絶叫して助けを求める、という事態になった。Tkさんがウォシュレットの使い方を教えてようやく事態は解決した。Mtさんはウォシュレットは初めてで、「いいわー」と満面の笑顔でトイレから出てきた。