人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

アル中病棟入院記123

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・4月1日(木)晴れ
(前回から続く)
「その問題のKwが、ついに第三病棟に強制的に戻されることになった。第三病棟は基本的に閉鎖病棟で、時間帯限定ながら開放病棟である第二病棟とは違う。本人はといえば、相変わらず朝からあちこち目的不明の電話をかけまくっている。いろいろな話が耳に入ってくる。入院中に知りあった相手から連絡先を聞き出しかたっぱしから電話して脅迫し銀行振込みで借金を申し込んでいる、生保を受けているが普段は闇金融の取り立てをやっているとか……そうKw本人が吹聴してまわっているらしいのだ」

「昨日は喫煙室でHAがFさんに、退院したKsさんの電話番号とメールアドレスをKwさんが知りたがっていたから、本人もいいよ、って言うんで私は知っているんだけど、ここ何日かのあの人見てると何するかわからないでしょ、教えないほうがいいかしら?本人に約束しちゃったの?メールアドレスなら着信拒否も変更もできるけど電話番号は面倒だからね。知人全員に番号変更知らせなきゃならないし。メールアドレスだけ教えて電話番号は知らないことにすれば?後は本人たちの責任だからさ」

「朝食後込みあった喫煙室にKwが踏み込んでくるなり車椅子のKuに、てめえこの野郎、しらばっくれやがって!おれ何もしてないよ。だからしらばっくれてるって言ってんだよ!と車椅子の両手すりをつかんで揺する。ちょうど喫い終えたのでそこで出てきた。その後Kwはナースステーションに呼ばれて第三病棟に移室していき、病棟中に安堵感が漂った。誰もあえて話題にしない、詮索しない、あの人物の存在していたことをなかったことにしたい、という雰囲気だった」

「だが夕方突然Kwが現れ、怒号をあげながらKuに突進してきた。夕方から看護婦の当直シフトで第二・第三が兼務になるので、行き来自由になったのを狙ったのだ。Kuは車椅子で器用にテーブルの間をぬって逃げ回る。Kくんとたまたま喫煙室にいたのだが、デイルーム中の人が大混乱に陥っているのが見えた。Fさんがナースコールをかける。Kuの車椅子が喫煙室に向かってくると、Kくんは必死にドアノブを押さえつけていた。すぐにOg看護婦がやってきてKwを連れて行った。Kwの替りにImくんが第三から移室してきて、ようやくこれでまた落ち着くぞ、という矢先のことだった」
(続く)